ヌママングースの基本情報
英名:Marsh Mongoose
学名:Atilax paludinosus
分類:マングース科 ヌママングース属
生息地:アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、赤道ギニア、エスワティニ、エチオピア、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リベリア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、ソマリア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
水辺で暮らすマングース
マングースと言うと、ミーアキャットに代表されるように、サバンナに生息する動物というイメージがあると思います。
しかし、このヌママングースは、英名に付く“swamp”も、和名の“ヌマ”も、沼のことを指しているように、水辺で生活を営みます。
食べるものも、カニや貝など水辺で生活する生き物が多く、それらを捕獲するために水中に進んで入ります。
泳ぎは達者で、最長15秒間も潜水することができます。
このように水が重要な環境となっているので、当然人間の活動による水質汚染は彼らにとって潜在的な脅威となっています。
しかし、ヌママングースは、水かきを持つ半水生の肉食動物、カワウソほどは水辺に依存していません。
鳥類やヤスデなど、水中にはいない生き物も食べますし、水辺から離れた所での観察例もあります。
ヌママングースの生態的な位置は、陸生のマングースと、半水生のカワウソの中間あたりとなるでしょう。
ところで、ヌママングースは鳥類を襲う時、面白い行動をとります。
ヌママングースの肛門付近には毛がなく、ピンクをしていて非常に目立ちます。
その肛門を見せるように、ヌママングースはあお向けになり、日光浴をしているふりをします。
すると、肛門に興味を引かれた鳥が近づいてきます。
ヌママングースはその瞬間、やってきた鳥に襲いかかるのです。
マングースという生き物は、死んだふりをしたり日光浴をしているふりをしたりと、中々の役者なのでしょうか。
ヌママングースの生態
生息地
ヌママングースは、サハラ以南のアフリカに広く分布します。
川や湖など水が近くにあり、十分な植生で覆われている環境を好みます。
エチオピアのバレ山脈では、標高3,950mで観察例があります。
食性
雑食性のヌママングースは、カニやムール貝、カタツムリ、爬虫類、両生類、鳥類とその卵、昆虫とその幼虫、小型哺乳類などを食べます。
ネズミやカエルを食べるときは、頭を砕き殺します。
形態
全長は約60㎝、体重は2.3~4.1㎏になります。
小臼歯と下顎の犬歯が特に発達しており、甲殻類や骨を砕いたりするのに適しています。
行動
ヌママングースは単独性です。
薄明薄暮に最も活発に動きます。
行動圏は約1.5㎢で、なわばり性が強いです。
行動圏は水辺に沿って直線的に築かれます。
ヌママングースは、脅威を感じたときには肛門嚢から、臭い茶色の分泌物を噴射します。
繁殖
繁殖についてはあまり知られていません。
ヌママングースは、年に2回、乾季と雨季に繁殖します。
妊娠期間は69~80日で、メスは地中の穴に乾燥した植物を敷いて作った巣に、1~3頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは毛に覆われた状態で生まれ、約12日で目を開きます。
生後2カ月には完全に離乳し、その後独立していきます。
寿命は飼育下で17年の記録があります。
人間とヌママングース
絶滅リスク・保全
ヌママングースは、その分布域の広さから絶滅に関してはそれほど懸念されておらず、IUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価に留まっています。
ただ、狩猟や生息地の破壊、汚染などは脅威となっており、その影響もあって個体数は減ってきているようです。
動物園
そんなヌママングースですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
マングース自体、日本では中々見ることができないのですが、先ほども出てきた同じマングース科のコビトマングースにだけは、上野動物園や天王寺動物園で見ることができます。
興味のある方はぜひ行ってみてください。