ヒメヌマチウサギの基本情報
英名:Marsh Rabbit
学名:Sylvilagus palustris
分類:兎形目 ウサギ科 ワタオウサギ属
生息地:アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
小島のウサギ
ケネディ宇宙センターやディズニーワールドがあるアメリカ合衆国のフロリダ州。
その南端には、フロリダキーズと呼ばれる、主に隆起したサンゴ礁からなる列島が存在します。
そしてそこには、ジョージア州などアメリカ南西部に広く生息するヒメヌマチウサギの亜種、ローワーキーズヒメヌマチウサギ(Sylvilagus palustris hefneri)が暮らしています。
ここでヒメヌマチウサギの学名に注目してみましょう。
属名のSylvilagusはラテン語で「森のウサギ」を意味しますが、一方の種小名palustrisは「沼地の」を表しています。
森のウサギも間違いではありませんが、体をより表しているのは種小名の方。
ヒメヌマチウサギは種小名、そして和名の通り、沼地や湿地など水資源が近くにある環境に暮らします。
海の近くや河口域でも生息しますが、淡水の方を好むようです。
低地の水に囲まれた環境で暮らす彼らはウサギでは珍しく泳ぐこともできます。
ちなみにローワーキーズヒメヌマチウサギの亜種小名hefneriは、雑誌『PLAYBOY』の創刊者、ヒュー・ヘフナーに由来しているようです。
話は戻ってヒメヌマチウサギは全体として個体数は十分で、絶滅はそれほど懸念されていません。
しかし、その亜種ローワーキーズヒメヌマチウサギは近い将来の絶滅が懸念されています。
2003年の推測で、成熟個体数は200~700匹。
また、1991~1993年の個体数のデータを使用した分析からは、50年以内に確実に絶滅するという推測結果が得られています。
大きな脅威となっているのは生息地の減少。
1959~2006年の間、海面上昇は彼らの生息地の半分を、人間による開発は約1割を奪っています。
ローワーキーズヒメヌマチウサギは合衆国魚類野生生物局(U.S. Fish & Wildlife Service:USFWS)によって「絶滅危惧種“endangered”」に指定されており、法的な保護が与えられています。
フロリダを訪れた際は、有名なネズミだけでなく隠れたウサギにも注目してみてください。
ヒメヌマチウサギの生態
生息地
ヒメヌマチウサギは標高150m以下の沿岸域の低地で暮らしています。
川などの水場が近くにあり、身を隠す植生がある環境に生息します。
ジョージア州に最も多く生息しています。
形態
体長は約40㎝、体重は1.2~2.2㎏で耳は約7㎝です。
他のすべてのワタオウサギとは異なり、しっぽの裏は白くありません。
他のウサギ同様、上顎には2重の切歯が存在します。
食性
陸生植物だけでなく、水生植物も食べます。
季節に応じて草や葉、枝、樹皮、果実などを食べます。
捕食者にはアメリカワシミミズクやアメリカチュウヒなどの猛禽類やボブキャット、コヨーテ、アカギツネ、イタチ類、アライグマ、ヘビ類などが知られています。
行動・社会
単独性のヒメヌマチウサギは、夕暮れから朝方にかけて活発になります。
オスの方がより広く行動し、基本的に行動圏は同性他個体と重複しません。
繁殖
繁殖は周年行われるようです。オスもメスも複数の異性と交尾し、メスは年に最大7回出産します。
メスの妊娠期間は30~40日、一度の出産で2~5匹の未熟な赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは生後4~5日で目を開き、生後12~15日で離乳し、独立していきます。
寿命は野生で最大4年、飼育下では最大7年ほどです。
人間とヒメヌマチウサギ
絶滅リスク・保全
ヒメヌマチウサギのフロリダ以外の個体数はよくわかっていませんが、絶滅が懸念されるほどではありません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
ヒメヌマチウサギは肉や毛皮、スポーツ目的で狩猟されますが、脅威というほどではありません。
一方、ノネコや車との事故、アライグマ、ヒアリは今後脅威となるかの性があります。
特にフロリダ南部では農作物を荒らす害獣として扱われることもあるようです。
動物園
ヒメヌマチウサギを日本で見ることはできません。