サバンナシマウマの基本情報
英名:Plains Zebra
学名:Equus quagga
分類:奇蹄目 ウマ科 ウマ属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、コンゴ民主共和国、エスワティニ、エチオピア、ケニア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、南アフリカ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
参考文献
シマシマの謎
遠くから見ても誰だかわかるシマウマ。
現存するウマ科を見る限り、縞模様はウマの歴史の中で1度だけ現れたとされており、現在3種のシマウマが知られています。
そんな彼らの縞模様の存在理由は、100年以上もの間、研究者の頭を悩ませ続けてきました。
現在、その理由はいくつかに絞られてきています。
例えば縞模様は捕食者を惑わすというもの。
縞模様はトラのようにシマウマを背景に紛れ込ませるだけでなく、的を絞りにくくします。
シマウマは群れで暮らすため、捕食者は縞模様のせいで群れの規模や獲物のスピード感などを誤認するというのです。
このような効果は私たちも身近に感じることができます(例えば理髪店の看板柱によるサインポール錯視など)。
しかし、ある地域のライオンはその生息数の割に多くのシマウマを捕食しています。
これは捕食者のために縞模様が存在するわけではないことを示しているかもしれません。
この他にも、縞模様が体温調整に役立っているとか、個体同士の認識やつながりに関連すると言った理由が推測されていますが、どれも強固な証拠が見つかっていません。
そんな中、今のところ最も証拠が積みあがりつつあるのが、吸血バエに焦点を当てたものです。
ツェツェバエなどを含む吸血バエは、そこに住む動物たちにとっては、血を失うだけでなく、病気になるリスクを高める厄介な存在です。
また、吸血バエの存在によって休息や採餌という生活の中の重要な行動に支障が出る可能性もあります。
特にシマウマの毛は短く、吸血バエの吻部の長さに及ばないため、シマウマにおいては、吸血バエの存在が特に邪魔になっていると考えられます。
通常、草食動物は逃げたりしっぽを振ったりしてこの吸血バエを追い払いますが、シマウマはこれに加え、縞模様でハエの被害を少なくしているというのがこの説の内容です。
実際に黒、白、縞模様の服を着せたウマを用いた実験では、縞模様のウマにハエが最も寄ってこなかったことが確認されています。
また、服ではなく実際の毛皮を使った実験では、シマウマの毛皮に降り立ったハエの数はインパラの毛皮に着地したハエよりも優位に少ないことがわかりました。
こうした実験から、シマウマの縞模様が吸血バエを避けるのに効果的で、それが彼らがシマシマである理由なのではないかと目されているのです。
ちなみに吸血バエはどうやら嗅覚などではなく視覚によって惑わされ、シマウマの体に着地しづらいのではないかと推測されています。
また、縞模様のうち黒の方によくとまるようです。
とはいえ、シマウマの縞模様の謎は完全には解明されていません。
例えば、シマウマの縞模様は地面に近い足や顔の方が、体の他の部分の幅より短いこと、また種によって縞模様の幅が違うことの詳しい理由は未だ解明されていません。
あるいは縞模様の存在理由も、ヒトの手の指が5本である理由と同じように、確たる理由がないのかもしれません。
いずれにせよ、シマウマのシマシマはその模様が吸血バエをそうするが如く、私たちをも惑わせ続けています。
Benefits of zebra stripes: Behaviour of tabanid flies around zebras and horses | plos.org
サバンナシマウマの生態
分類
形態的にクロウシェイシマウマ(E. q. crawshaii)、セールシマウマ(E. q. borensis)、グラントシマウマ(E. q. boehmi)、チャップマンシマウマ(E. q. chapmani)、バーチェルズシマウマ(E. q. burchellii)、クアッガ(E. q. quagga)の6亜種に分類されます。
このうち縞模様が体の前部にのみあるクアッガは、過剰な狩猟と家畜との競合により19世紀に絶滅しています。
生息地
サバンナシマウマは、アフリカ東部から南部にかけて標高4,300mまでの環境に生息します。
熱帯雨林や砂漠、砂丘には生息しません。
ウマ科の中でも特に水資源に依存しており、乾季でも水場が近くにある範囲で行動します。
形態
体長は2.2~2.5m、肩高は110~145㎝、体重は175~350㎏、尾長は47~56㎝で、オスの方がメスよりも大きくなります。
縞模様の幅はシマウマの中では最も広くなります。
縞模様は多様で個体によって異なります。
他のシマウマと違い、縞模様は基本的に腹まで伸びています。
また、オスの方がメスよりも黒が濃いです。
食性
グレイザーのサバンナシマウマが食べるものの90%は茎や葉鞘ですが、葉や枝を食べることもあります。
ウシなどの反芻獣とは違い、大腸発酵をする彼らは高くない質のエサを大量に食べることで生活しています。
エサの乏しい地域の群れは日に30㎞以上も移動します。
捕食者にはライオンやブチハイエナ、リカオン、チーター、ヒョウ、ナイルワニなどがいます。
行動
行動圏は通常4~600㎢で、乾燥地帯の方が広くなります。
サバンナシマウマの一部は、雨の後に育つ草を求めて時に500㎞以上の大移動をします。
サバンナシマウマは草原を保つために重要な役割を果たしています。
彼らは低質な古い草や茎を食べたり、大移動によって草を踏みつけたりするので、これらが植物の成長を促すのです。
こうして彼らが食べた後の草原にはオグロヌーやガゼル、トピなどが訪れ、シマウマが結果的に育てた植物を食べます。
社会
サバンナシマウマは、1頭のオスと1~6頭のメス、そしてそれらの子供からなるハーレムを作ります。
メスの間には年齢に応じた序列があり、子は母親の地位を受け継ぐようです。
群れを持たないオスはオスだけの群れを作り、10頭以上が集まることもあります。
ハーレムは大移動の際などにはいくつも集まることがあります。
群れのつながりはグルーミングなどのコミュニケーションで保たれます。
6種類の音声が知られています。
繁殖
年中繁殖しますが、出産は10月~3月、特に1月の雨季にピークに達します。
メスの出産間隔は約2年、妊娠期間は約1年で、35㎏の子供を1頭産みます。
赤ちゃんはものの10分程度で歩けるようになり、生後1週ごろ草を食べ始めます。
完全に離乳するのは生後7~11ヵ月です。
性成熟には生後16~22ヵ月で達し、1~4歳で独立していきます。
寿命は飼育下で長いと約40年です。
人間とサバンナシマウマ
絶滅リスク・保全
サバンナシマウマは50万頭以上いるとされていますが、2002年に66万頭以上と推測されていたことを考えると減少傾向にあり、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧に指定されています。
東アフリカでは毛皮目的で狩猟されるようです。
また、一般的ではありませんが肉目的で狩猟される場合もあるようです。
シマウマは一般的に気性が荒く調教に向いていないとされていますが、19世紀、南アフリカのトランスバールでは、馬車牽引などを目的として、バーチェルズシマウマの家畜化が成功しています。
ただ、今となっては現代的技術に置き換わっています。
動物園
サバンナシマウマは全国各地の動物園で見ることができます。
亜種のチャップマンシマウマやグラントシマウマを飼育する動物園もあります。
また、兵庫県の姫路セントラルパークでは、サバンナシマウマ(チャップマンシマウマ)だけでなくグレビーシマウマを見ることもできます。
亜種間、種間の違いをぜひ自分の目で見てみてください。