ピグミーマーモセットの基本情報
英名:Pygmy marmoset
学名:Cebuella pygmaea
分類:オマキザル科 ピグミーマーモセット属
生息地:ボリビア, ブラジル, コロンビア, エクアドル, ペルー
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉
世界最小の真猿類
ピグミーマーモセットは、体長15㎝前後、体重85‐140gで真猿類の中では世界最小と言われています。
そういわれても真猿類とは何だよという人が多数だと思いますので少しお話しましょう。
真猿類とは、直鼻亜目 真猿下目に分類される霊長類のことです。
現在、霊長類は大きく曲鼻亜目と直鼻亜目に分けることができます。
さらに、直鼻亜目はメガネザル下目と真猿下目に分けることができますが、真猿類とは、真猿下目に分類される霊長類のことを言います。
伝統的には、霊長類は現在曲鼻亜目に分類されるキツネザルやロリス、そしてメガネザルを含めた原猿亜目と真猿亜目に分けられていましたが、最近の研究によりメガネザルの立ち位置が見直され、現在のような分類になった経緯があります。
さて、真猿類に属するサルは骨格や手の構造などにおいて特徴を持ちます。
例えば、原始的な特徴を持つ原猿類とは異なり、真猿類は眼窩後壁を持ち、目は完全に骨で囲われています。
この眼窩後壁は咀嚼筋の動きより視界が揺れることを防ぎます。
真猿類はメガネザルや曲鼻類と比べると、昼行性の者が多いです。
明るい所では目がよく効きます。
つまりこの特徴は、視覚に頼る真猿類だからこその特徴と言えます。
他にも、前頭骨と下顎骨の左右の骨が癒合しているなどの特徴を持ちます。
このような真猿類にはピグミーマーモセットの他、クモザルや天狗のような長い鼻を持つテングザル、さらにはヒトもこの真猿類に分類されます。
ピグミーマーモセットはこの真猿類の中で一番小さいわけで、本当に手に載るサイズです。
赤ちゃんともなれば小指にしがみつけるくらいのかわいらしいサイズになります。
真猿類には霊長類最大のゴリラも含まれているので、その多様性には驚くべきものがあります。
ちなみに、ピグミーマーモセットは真猿類で一番小さいですが、霊長類全体で言うと、最小のものは曲鼻亜目に属するマダムベルテネズミキツネザルと言われています。
彼らは10㎝にも満たず、体重もわずか30gしかありません。
霊長類の多様性、おそるべしです。
霊長類進化の科学(著:京都大学霊長類研究所 松沢 哲郎, 髙井 正成, 平井 啓久, 國松 豊, 相見 滿, 遠藤 秀紀, 川本 芳; 田中 洋之, 今井 啓雄)
ピグミーマーモセットの生態
分類
近年の遺伝子研究により、ピグミーマーモセットの亜種とされていたヒガシピグミーマーモセットは独立種とされています。
そのため現在、ピグミーマーモセットには、ニシピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)とヒガシピグミーマーモセット(Cebuella niveiventris)が存在します。
生息地
ニシピグミーマーモセットはブラジル、エクアドル、ペルー、コロンビアの、ヒガシピグミーマーモセットはボリビアとブラジルの熱帯雨林に生息しています。
食性
主食は虫や樹液です。
樹液を食べることは意外に思われるかもしれませんが、ピグミーマーモセットにとっては重要な食べ物で、採食時間の3分の2が樹液の採食に当てられます。
どう食べるかというと、下の歯で樹皮に傷をつけたり穴をあけたりし、そこから出る樹液を舐めるのです。
そのため、ピグミーマーモセットには鋭い犬歯があり、下あごがやや前に出ています。
下の動画ではまさにその様子を見ることができるので是非ご覧ください。
形態
体長は約13㎝、体重は120g前後、しっぽの長さは約20㎝です。
指にはかぎ爪を持ち、樹上をヴァーティカル・クリンギング・アンド・リーピングで移動します。
上の動画でもピョンピョンジャンプしていますね。
行動
ピグミーマーモセットは、一般的に2~6匹から成るペア型の群れを作ります。
群れはなわばりを持ち、なわばりは臭腺から出るにおいでマーキングされます。
個体間のコミュニケーションには、このにおいの他、音声やグルーミングなども用いられます。
繁殖
ピグミーマーモセットの繁殖には季節性が見られません。
メスは約4.5カ月の妊娠期間の後、1~3匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんの重さはなんと約15g。
非常に小さいです。
赤ちゃんは父親や兄弟によっても育てられ、約3カ月で離乳します。
性成熟には約2年で達し、メスは出産3週間後には発情を再開します。
寿命は飼育下で約19年、野生下では約12年と言われています。
人間とピグミーマーモセット
絶滅リスク・保全
ピグミーマーモセットは生息地の縮小の他、肉目的、特にペット目的の狩猟により個体数を減らし続けています。
狩猟は一時期猛威を奮っていたようで、そのために国際取引が最も厳しく禁止されるCITES附属書Ⅰに1977年~1979年の間記載されていました(現在はCITES附属書Ⅱ)。
かつてピグミーマーモセットは絶滅の危機に関してIUCNでは軽度懸念の評価でしたが、2019年、レッドリストでニシピグミーマーモセットもヒガシピグミーマーモセットも新たに絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)として登録されてしまいました。
動物園
そんなピグミーマーモセットですが、日本では、千葉県の千葉市動物公園、静岡県の日本平動物園、愛知県の日本モンキーセンターで会えるようです。
サルの中でも、そのサイズ感とぱちくりおめめでひときわかわいいこのピグミーマーモセットに、皆様もぜひ会いに行ってみてください。