ベローシファカの基本情報
英名:Verreaux’s Sifaka
学名:Propithecus verreauxi
分類:インドリ科 シファカ属
生息地:マダガスカル南西部、南部
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
サイドステップの神
初めに名前の由来から片付けておきましょう。
ベローとはフランス人動物学者ジュール=ピエール・ヴェローから来ているようです。
そしてシファカ。
ベローシファカ以外にもシファカは何種類かいるのですが、このシファカという名前、信じがたい由来を持っています。
シファカは群れを作り縄張りを守っているのですが、他の群れとの間で縄張り争いがよく起きます。
その時に、「シファカ!」と鳴くらしいのです。
絶対に嘘だ!初めてシファカを見つけた人が、フラれた恋人の名前をこのサルの鳴き声に乗せたみたいな物語が絶対にあるはずです。
真偽を確かめるべくこの鳴き声とやらを聞いてみたいのですが、残念ながら今のところシファカの鳴き声を確認できていません。
実際に聞きに行くしかありませんね。
実際に聞くまで信じませんよ、私は。
名前の話が意外に長くなってしまいました。
本題に入りましょう。
ベローシファカは特に地上を移動するとき、個性を発揮します。
両手としっぽを上に挙げてバランスをとりつつ、二本足で横っ飛びするのです。
たまに、体の向きを反転させたり、空中で回転したりと技を織り交ぜながら、地上を移動します。
下の動画でもその様子を見ることができるので、是非ご覧ください。
ちなみに、樹上での移動もユニークです。
その方法はヴァーティカル・クリンギング・アンド・リーピングといって、木に垂直にしがみついたまま木から木へ飛び移るといった方法です。
ジャンプする距離は10mにもなるというので、驚きです。
地上にしろ樹上にしろ、彼らの移動にはその強靭な脚から生みだされるジャンプが欠かせないのです。
二型成熟
ベローシファカは二型成熟という特徴を持ちます。
これはオトナオスに外見上明らかな2タイプがあることを意味します。
ベローシファカは、複雄複雌の群れを作りますが、群れには2~3頭のオトナオスが含まれます。
オスたちの間には序列があり、最も優位な個体だけが群れのすべてのメスと交尾できます。
そのため、オスの間ではその座をめぐる闘争があるのですが、見事優位に立った個体にはある特徴が現れます。
それが胸のあたりの色です。
通常、このサルの胸はクリーム色をしているのですが、優位になるとオスの胸はこげ茶色になります。
このように、成熟したのちに外見上の変化を見せる哺乳類は珍しいです。
サルの中にもこのような種は少ないですが、オランウータン(優位オスのフランジ)やマンドリル(優位オスのさらに派手な色)などにも見られます。
ちなみに、ベローシファカの群れで一番強いのはオスの中で最も優位なオスではなくメスです。
ベローシファカの生態
生息地
ベローシファカはキツネザルのなかまです。
キツネザルのなかまはマダガスカルにしか生息していません。
ベローシファカはマダガスカルの中でも南西部から南部にかけて、乾燥林などで生活しています。
昼行性で、明け方と夕暮れ時に最も活発に動きます。
食性
主に若葉や果実、花を食べ、そのほかに、種子や樹皮、シロアリ塚も食べます。
乾季には栄養価の低い葉だけでしのがなければなりませんが、シファカの長い小腸が、繊維質の多い葉を消化するのを可能にしているようです。
形態
体長は45~55㎝、体重は3~7㎏、しっぽの長さは43~56㎝で、体格において雌雄差はありません。
行動
ベローシファカは、2~13頭から成る複雄複雌の群れを作ります。
成長したオスは群れを離れることもある一方、メスは生まれた群れに留まり、母親の地位を受け継ぎます。
群れは縄張りを持っており、尿や臭腺からの分泌物などのにおいによってマーキングします。
他の群れに対しては敵対的で、吠えたり、とびかかったりして激しいケンカを繰り広げます。
繁殖
ベローシファカの繁殖には季節性が見られ、1月~3月にかけて交尾が行われます。
メスは130~140日の妊娠期間の後、1匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは群れのオトナたちから世話を受け、約半年で離乳します。
性成熟には約2.5年で達し、飼育下では約20歳まで生きます。
メスの性的休止期間は約1年です。
人間とベローシファカ
絶滅リスク・保全
ベローシファカは、農業、伐採、火事などによる生息地の縮小や、肉目的の狩猟の影響を受け、個体数を減らし続けています。
その結果、2014年には近い将来絶滅の可能性が高いことを表す絶滅危惧ⅠB類に指定されてしまいました。
動物園
そんなベローシファカですが、残念ながら日本では会うことができません。
神がかったサイドステップを見られないだけでなく、シファカの鳴き声問題の解決に時間を要しそうです。
ちなみに、アメリカのセントルイス動物園やサンディエゴ動物園など海外では見られるらしいですよ!