ボウシテナガザルの基本情報
英名:Pileated Gibbon
学名:Hylobates pileatus
分類:テナガザル科 テナガザル属
生息地:カンボジア, ラオス, タイ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
帽子をかぶったお母さん
外見上における性差が顕著である場合、そのサルの名前はオスの外見を基に付けられることが多いです。
例えば、クロザル、クロホエザル、シロガオサキなどは、名前のように黒や白をしているのはオスだけです。
メスは、その名前からは想像できないような姿をしています。
また、同じテナガザルであるホオジロテナガザルも、頬が白いのはオスだけで、メスは黒い頭頂部とクリーム色の体をしておりオスとは全然違います。
しかし、このボウシテナガザルの名前は、メスの姿に由来しています。
オスが黒い体に白いつながり眉毛という姿をしているのに対し、メスは灰色の体と黒いおなか、そして帽子をかぶったような黒い頭(こういう感じの哲学者いますよね)が特徴的です。
この特徴的な頭からこのサルの名は付けられました。
ちなみに、英名の“pileated”は、“頭を覆う冠毛”という意味で、こちらもメスから名付けられたようです。
ボウシテナガザルは、名前がメスの外見に由来する、珍しいサルだと言えます。
ボウシテナガザルの生態
生息地
ボウシテナガザルは、タイやカンボジアの熱帯常緑林などに生息します。
食性
昼行性で、主に果実を食べます。
その他には、葉や昆虫、卵なども食べます。
主食である果実の種子は糞と共にそのまま排出されるので、このサルは種子の散布者として、森林で重要な役割を担っています。
ほとんど樹上で暮らし、ブラキエーションで移動します。
二足歩行をすることもあり、その場合は両手を上に高く上げて不格好に歩きます。
形態
体長は45~64㎝、体重は4~8キロで、性差はあまりありません。
また、しっぽがないことは、すべての類人猿に見られる特徴です。
その一方、テナガザルには尻だこがあり、これはチンパンジーやゴリラなどの他の類人猿が持たない特徴です。
行動
ボウシテナガザルは、他のテナガザルと同様、一夫一婦制の社会を作ります。
オスとメスは生涯を共にし、なわばりを守ったり、子どもとコミュニケーションをしたりするためにデュエットを組んで歌を歌います。
歌はオスとメスでパートが分かれており、歌声で性が分かるみたいです。
また、歌は特に朝方歌われることが多いようです。
ボウシテナガザルの群れには、オスとメスのほかに彼らの子どもがいます。
子供は5~8年で性的に成熟し、群れを離れます。
そして異性と出会って自分たちの群れを作ります。
繁殖
繁殖には季節性はなく、メスは約7カ月の妊娠期間を終えて、1匹の赤ちゃんを産みます。
この赤ちゃんはオスメス関係なく灰色をしています。
彼らは1~2年経つと離乳し、2~4年で親の助けを借りず、移動したり採食したりできるようになります。
人間とボウシテナガザル
絶滅リスク・保全
ボウシテナガザルは、生息地の破壊、分断や狩猟などのために、個体数を減少させています。
生存する個体数は47,000頭と推測されており、レッドリストには絶滅危惧ⅠB類として登録されています。
動物園
そんなボウシテナガザルですが、日本の動物園でも会うことができます。
神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、愛知県の日本モンキーセンター、愛媛県のとべ動物園がボウシテナガザルを展示しています。
機会がある方は、是非足を運んでみてください。