ユーラシアオオヤマネコの基本情報
英名:Eurasian Lynx
学名:Lynx lynx
分類:ネコ科 オオヤマネコ属
生息地:アフガニスタン、アルバニア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、中国、クロアチア、チェコ、エストニア、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ハンガリー、インド、イラン、イラク、イタリア、カザフスタン、北朝鮮、キルギス、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、モンゴル、ネパール、北マケドニア、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、スイス、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉
オオオオヤマネコ
ユーラシアオオヤマネコは、カナダオオヤマネコやボブキャットなど、他のオオヤマネコとよく似た姿をしていますが、彼らとは少なくとも100万年以上前に分岐したことが最近の分子研究により分かっています。
100万年以上たっているのにこれほど姿が似ているのには驚きですが、ユーラシアオオヤマネコが他のオオヤマネコと顕著に違う部分があります。
それが体の大きさです。他のオオヤマネコは、オスでも20㎏を超えないのに対し、ユーラシアオオヤマネコはメスでも20㎏を超えることがあり、オスに至っては30㎏以上にもなる個体がいます。
ユーラシアオオヤマネコは、最大のオオヤマネコなのです。
これだけ大きいので、彼らは生息地において、ヒグマ、ハイイロオオカミに次いで大きな肉食獣として、生態系の頂点に君臨しています。
彼らの獲物の多くは、小型・中型の有蹄類、大型有蹄類の子供です。
他のオオヤマネコは、ウサギなどの小型哺乳類を日常的に捕食するのに対し、ユーラシアオオヤマネコはその大きな体のために、より大きな獲物を捕食します。
彼らがよく食べるのは、体重20㎏ほどのノロジカですが、時に自分の体重の3~4倍、つまり150㎏もある獲物を捕らえることもあります。
これは他のオオヤマネコにはできないことです。
とはいえ、いくら大きなユーラシアオオヤマネコでも、捕まえた獲物を一気に食べることはできません。
彼らは、食べ残しに雪や落ち葉などをかけて隠しつつ、1週間ほどかけて、ゆっくりと獲物を食べていきます。
下の動画では、狩りの様子や獲物に雪をかける姿を見ることができるので、是非ご覧下さい。
ユーラシアオオヤマネコの生態
生息地
ユーラシアオオヤマネコは、赤道以北のユーラシア大陸に広く生息します。
生息する標高は0~4,700mで、ツンドラ地帯や山地、寒冷な半砂漠など、様々な環境で暮らします。
食性
ユーラシアオオヤマネコは純粋な肉食で、主食の有蹄類の他には、ノウサギや齧歯類などの小型哺乳類も食べます。
また、食べるかは別として、アカギツネやユーラシアカワウソ、マツテンなどを襲うこともあります。
形態
体長は70~150㎝、肩高は60~65㎝、体重はメスが13~21㎏、オスが11~36㎏、尾長は12~24㎝で、オスの方が大きくなります。
足が長く、また前肢より後肢の方が長いです。
足先は大きく、毛で覆われています。
これらの特徴は雪上での生活に非常に適しています。
爪は他のネコ同様出し入れ可能で、特徴的なまだら模様にはいくつかのパターンが見られます。
行動
ユーラシアヤマネコは、基本的に夜行性ですが、子供がいる場合やエサが少ない時には日中活動することもあります。
地上性が強いですが、木登りや泳ぐこともできます。
行動圏は広く、オスで通常240~280㎢、メスで100~200㎢で、時に3,000㎢に及ぶこともあります。
行動圏は尿や糞、爪の痕などでマーキングされ、オスの行動圏は複数のメスのものと重複しています。
また、メス同士より、オス同士の方が重複が大きく、エサが少なくなるとこの重複も大きくなります。
一晩の移動距離は約20kmで、生息密度は100㎢に0.3~5頭です。
繁殖
ユーラシアオオヤマネコの繁殖には季節性が見られ、交尾は2~4月に行われます。
メスの発情期間は3~7日で、妊娠期間は67~74日です。
出産は5月~7月にみられ、一度に300g前後の赤ちゃんが通常2~3頭産まれます。
出産、育児は木の洞や根っこの隙間などで母親により行われ、巣の移動も見られます。
赤ちゃんは生後10日ほどで目を開き、5~6カ月までには完全に離乳します。
生後10カ月には独り立ちしますが、しばらくは親元に残る場合もあります。
性成熟にはメスが1歳、オスが2歳ごろ達しますが、実際の繁殖はその1年後に行われます。
メスの出産間隔は、子供がいる場合3年、いない場合は1年で、寿命は野生下で最長20年、飼育下では25年の記録があります。
人間とユーラシアオオヤマネコ
絶滅リスク・保全
ユーラシアオオヤマネコは、人間による生息地の破壊、スポーツハンティング、家畜を襲うことに対する懲罰としての迫害、エサである有蹄類の乱獲など、様々な脅威に直面しています。
また、年間1,000頭の毛皮が販売されているロシアを除き、毛皮の取引は生息国で現在禁止されていますが、これもかつては彼らにとって脅威となっていました。
このような脅威が絡まり合った結果、ユーラシアオオヤマネコはかつてヨーロッパ全域に生息していましたが、その生息域を縮小させています。
ただ、その生息域が依然として広いことや、個体数が安定していることなどから絶滅の危険性はないとされ、レッドリストでも軽度懸念とされています。
動物園
そんなユーラシアオオヤマネコですが、日本の動物園でも見ることができます。
栃木県の宇都宮動物園、東京都の羽村市動物公園、京都府の京都市動物園、兵庫県の王子動物園が、ユーラシアオオヤマネコを飼育しています。
ユーラシアオオヤマネコは、生息域が広く地域的な違いがあることから、9亜種が知られています。
これらの動物園で飼育されているユーラシアオオヤマネコにも違いがあるかと思われるので、是非、複数の動物園で彼らを観察してみてください。