オセロットの基本情報
英名:Ocelot
学名:Leopardus pardalis
分類:ネコ科 オセロット属
生息地:アルゼンチン、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、フランス領ギニア、グアテマラ、ガイアナ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、スリナム、トリニダード・トバゴ、アメリカ合衆国、ウルグアイ、ベネズエラ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
オセロット効果
オセロットは、オセロットより小さいネコ科動物である、ジャガランディやマーゲイ、タイガーキャットなどと同所的に生息しています。
オセロット効果(ocelot effect)は、オセロットの生息密度が、これらの小さいネコ科動物の生息密度に影響を与えていることを指します。
オセロットは、その生息密度が非常に高く、100㎢に2~100頭以上にもなります。
一方、マーゲイなどの小型ネコたちの生息密度は100㎢に多くて2,30頭です。
私たちには小さい動物ほど多くいるという直観がありますが、この事実はその直観に反します。
オセロット効果は、この事実を説明します。
中南米の小型ネコたちの主食は、齧歯類などの小型哺乳類です。
この小型哺乳類は、オセロットのエサメニューの一つでもあります。
似たようなエサを似たような様式で食べる生物集団をギルドと言いますが、彼らは皆、同じギルドに属していると言えます。
このギルドの捕食者同士が、さらに食う食われるの関係になることをギルド内捕食と言い、このギルド内捕食の可能性が、小型ネコたちの生息密度がオセロットにより影響される一因だと考えられています。
オセロット効果によると、オセロットの生息密度が小さい時や、オセロットが不在である時に、ギルド内捕食の蓋然性が低下するため、小型ネコたちの密度は増加すると考えられますが、実際、その予測と同じことが起きています。
さらに面白いことに、中南米においてオセロットはジャガー、ピューマに次いで大きなネコ科動物ですが、オセロットの生息密度は、より大きなジャガーやピューマに左右されていないとされています。
実際、オセロットと小型ネコたちの生息密度は相関していますが、オセロットとジャガー、ピューマの生息密度はほとんど相関していません。
これらの事実は、最も大きな捕食者であるジャガーやピューマではなく、中型のオセロットが小型ネコたちの生息密度を調節している強力な証拠となっています。
オセロットの生態
生息地
オセロットは、中南米に位置する、標高3,000mまでの低木林やマングローブ、乾燥林、湿潤林など、様々な環境に生息しますが、密生した植生がある環境を好みます。
また、エサさえあれば二次林や農地など人の手が入ったところでも生きていくことができます。木登りが得意で、泳ぐこともできます。
食性
オセロットは、利用可能であればナマケモノやアグーチ、ホエザル、パカ、アルマジロなどの中型哺乳類を主食とします。
この他、コウモリやネズミ、リスザル、タマリンなどの小型哺乳類、ヘビ、トカゲ、魚類、鳥類、甲殻類、ハナジロハナグマなどの肉食動物、死肉を食べることもあります。
イグアナを捕食するオセロット
形態
体長はオスが67~101㎝、メスが69~91㎝、体重はオスが7~18.6㎏、メスが6.6~11.3㎏で性的二型が見られます。
尾長は25~45㎝と、見た目のよく似たマーゲイに比べて短く、通常地面にはつきません。
前足は後足よりも大きく、コスタリカやパナマでの呼称である“manigordo”はこの大きな手を指しています。
行動
オセロットは、単独性の動物です。
主に夜行性、薄明性ですが、雲が厚い時や雨季には日中の活動が増えます。
1日の活動時間は3~17時間で、移動距離は1.8~6.7kmです。
行動圏はオスが5~90㎢、メスが1~75㎢で、オスの行動圏は複数のメスの行動圏と重複していることが普通です。
行動圏はパトロールやにおいづけにより他個体にアピールされますが、行動圏の周辺は他個体と大幅な重複が見られます。
繁殖
繁殖は年中みられますが、地域により季節性があります。
繁殖は1年おきに行われ、メスの発情期間は4~6日です。オスもメスも複数の相手と交尾し、交尾は1日に5~10回ほど行われます。
妊娠期間は79~82日。妊娠するとメスは茂みに巣を作り、そこに200~350gの赤ちゃんを一度に1~2頭産み落とします。
オセロットの繁殖スピードは非常に遅く、メスは生涯に5頭前後しか子供を産みません。
赤ちゃんは、生後15~18日で目を開き、6週で離乳します。
生後17~22カ月で独立しますが、2~3歳までは親の行動圏に留まることもあるようです。
オスの方がメスよりも分散し、生まれた所から2.5~30km離れたところまで分散します。
寿命は野生で7~10年、飼育下では20年以上生きることもあります。
人間とオセロット
保全状況
オセロットは、特に1960年代、1970年代の毛皮の需要の高まりを受け、乱獲されました。
オセロットの毛皮の価値は非常に高く、ドイツではコート1着が600万円もしたと言います。
年に14~20万頭もの毛皮が中南米から輸出された結果、オセロットの個体数は激減し、1989年にはとうとう国際取引が禁止されます。
しかし、現在も密猟が広範囲にわたって続いており、生息地の減少と共に、オセロットの大きな脅威となっています。
オセロットは現在も個体数を減らし続けていますが、その分布域の広さから絶滅は懸念されておらず、レッドリストでは軽度懸念の評価となっています。
動物園
そんなオセロットには、日本でも神奈川県のよこはま動物園ズーラシアにて会うことができます。
皆さんもオセロットの美しい姿に魅了されるという、オセロット効果(?)を体感してみてください。