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ミナミハンドウイルカ

ミナミハンドウイルカ
©2011 Mike Prince : clipped from the original
目次

ミナミハンドウイルカの基本情報

英名:Indo-Pacific Bottlenose Dolphin
学名:Tursiops aduncus
分類: 鯨偶蹄目 マイルカ科 ハンドウイルカ属
生息地: 北太平洋、南太平洋、インド洋
保全状況: NT〈準絶滅危惧〉

ミナミハンドウイルカ
Photo credit: Bernard DUPONT

参考文献

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社会的な鯨

ハンドウイルカ類は、チンパンジーのような離合集散型の群れを作ります。

普段は平均2~15頭のグループで生活しますが、それが500頭以上の集団になる場合もあります。

ハンドウイルカ類の社会は、血縁のあるメス同士を中心とした母系社会と言われますが、その実は非常に多様で流動的な社会です。

例えば、同世代が集まった群れもあれば、子連れの母親だけの群れ、複数の大人のオスとメスの群れ、オスだけの群れなど様々です。

そしてこうした群れがついたり離れたりする、これが離合集散型の社会です。

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このように複雑な社会を築くハンドウイルカ類は、それを維持するために自己と他者を区別する認知能力のほか、コミュニケーションも高度に発達させてきました。

海の中で特に重要なコミュニケーション手段は、音と接触です。


ハクジラ類はクリックスと呼ばれる音を使ってエコロケーションを行いますが、このクリックス以外にも、ハンドウイルカ類にはコミュニケーションのための鳴音が存在します。

例えば、クリックスと同様に短い音の連なりであるポップ音というパルス音は、オス同士のコミュニケーションに使われます。

ハンドウイルカ類のオス同士は、繁殖相手の確保という目的から2~3頭の同盟を作ることが知られていますが、このオスたちがメスたちに発する音がポップ音です。

パルス音に対し、連続する音はホイッスルと呼ばれます。

ホイッスルをする報告がないハクジラもいますが、ハンドウイルカの場合、ホイッスルには群れをまとめる機能があるといわれています

また、ホイッスルには生涯ほとんど変化のない個体特有のものもあり、シグネチャーホイッスルと呼ばれています。

これらは鳴き交わされ、親密な個体同士であれば相手のシグネチャーホイッスルを真似する場合もあります。

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音だけでなく、触れ合うことも鯨類にとっては重要なコミュニケーションです。

例えば体をこすりつけあうラビングと呼ばれる行動は、霊長類でいうところのグルーミングの効果があるとされ、つながりの維持に重要な役割を果たしています

また、他個体を胸鰭で触りながら泳ぐコンタクトスイムは、メス同士や母子で見られます。

他にも、生殖孔に触れたり生殖器を挿入したりするなどの社会的性行動は、ボノボのように性別にかかわらず見られます。

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このように様々なコミュニケーションによって成り立つ高度な社会を持つハンドイルカ類では、仮親行動里親行動も見られます。

仮親行動では主に若いメスが自分の子どもではない個体と並んで泳ぐ姿が見られます。

この時、母子もよくとる、子供を横につけ水流にのせるエシェロンポジションが取られることが多いです。

仮親行動が子供の養育につながっているかは不明ですが、自分の子ではない個体を実際に育てる里親行動も知られています。

里親とその子は母子特有で授乳に関するといわれる縦並びの隊形、インファントポジションをとることが確認されています。


このように様々なコミュニケーションの上に成り立つハンドウイルカ類の社会は、社会というものの良い側面を教えてくれますが、一方で子殺しの報告もあります。

我々人間は最も高度に社会を発展させてきた動物であり、社会というものの悪い側面も知っています。

そうした部分をどうすれば乗り越えられるか、イルカの社会からわかることもあるかもしれません。

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ミナミハンドウイルカ
Photo credit: Bernard DUPONT

ミナミハンドウイルカの生態

分類

かつて同じ種だとされていましたが、ハンドウイルカとは1990年代から別種とされています。

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生息地

インド洋、西太平洋の温帯から熱帯にかけて、水深の浅い沿岸域に生息します

定住傾向にありますが、日本の一部地域などでは近年移住し生息域を拡大させていると思われる個体群が存在します。

形態

体長は1.8~2.5m、体重は175~200㎏ほどで、オスの方が大きくなります。

ハンドウイルカよりはほっそりしており、成熟するころに体に斑紋ができる個体もいます。

食性

主に群集性の魚類や底魚、サンゴ礁を住みかとする魚類、イカやタコなどの頭足類を主食とします。

採餌方法には様々な方法があり、哺乳類では極めて珍しい道具使用が認められます

捕食者にはシャチが知られています。

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行動・社会

ミナミハンドウイルカはハシナガイルカハンドウイルカカワゴンドウなどと生息域が重複しているため、同時に観察されることがあります。

彼らは種を超えてコミュニケーションを行っている可能性があります。

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繁殖

出産間隔は2~6年、妊娠期間は約12ヵ月で、0.9~1.25m、9~18㎏の赤ちゃんが一頭生まれます。

野生では3~5歳まで母乳を飲む場合もあるようです。

性成熟にはオスが9~13歳、メスが7~12歳で達し、寿命は40年ほどとされています。

人間とミナミハンドウイルカ

絶滅リスク・保全

沿岸性のミナミハンドウイルカにとって、定置網などの漁具への混獲や、船舶の騒音、海洋汚染、ガスや石油の採掘、沿岸域の開発などは大きな脅威です。

現在の個体数の傾向については不明ですが、全体で4万頭ほどと推測されており、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧に指定されています。


日本では現在、捕獲枠は設けられていませんが、過去には個体群の規模からみて少なくない数が捕獲されてきました。

例えば、1975年の沖縄国際海洋博覧会で展示するため、前年に奄美諸島で58頭が捕獲されています。

ちなみに博覧会跡地に国営公園として設置された海洋博公園では、のちに美ら海水族館が誕生しています。

日本近海にはいくつかの個体群が存在しますが、東京都の御蔵島に100頭前後、小笠原諸島に200頭前後、熊本県天草に200頭前後などなど、決して大きくはありません。

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動物園

ミナミハンドウイルカは、日本では沖縄県の美ら海水族館で会うことができます。

野生のミナミハンドウイルカに会える場所も少なくなく、東京都の御蔵島では水中の彼らを見ることができます。

ここでは1994年から水中動画による個体識別が行われており、ミナミハンドウイルカ研究の重要拠点ともなっています。

御蔵島ドルフィンスイムツアー|イルカと泳ぐ感動体験

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