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ミナミゾウアザラシ

ミナミゾウアザラシ
©2024 steve b : clipped from the original
目次

ミナミゾウアザラシの基本情報

英名:Southern Elephant Seal
学名:Mirounga leonina
分類:食肉目 アザラシ科 ゾウアザラシ属
生息地:南極、アルゼンチン、オーストラリア、チリ、ニュージーランド、南アフリカ、イギリス(セントヘレナ、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島)、フランス(ケルゲレン諸島など)
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ミナミゾウアザラシ
Photo credit: Liam Quinn

参考文献

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規格外の鰭脚類

南極や亜南極に生息するミナミゾウアザラシ。

特にオスはその名の通りゾウのような鼻を持ち、体長は最大で6m近く、体重は4tにもなり、もはやアジアゾウよりも大きくなります。

このように鰭脚類では圧倒的な大きさを誇る彼らは、何もかもが規格外です。

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例えば彼らの繁殖を見てみましょう。

オスはメスが上陸する1ヵ月前に繁殖場に上陸し、長いと3ヵ月間、何も食べずに陸でなわばりを競います。

大きな鼻でエンジンのような音を出したり、体の半分以上を起こし、歯を武器としてぶつかり合ったりする姿は、見る者をおびえさせます。

この激しい闘争の末、数いるオスの中で交尾できるのはたった2~3%のオスだけ。

彼らが繁殖場にいるほとんどのメスと交尾することができます。

ちなみにこのような繁殖はどちらかというとアシカ科に多く見られます。

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一方、メスは繁殖場で交尾だけでなく育児も行います。

メスもオス同様、繁殖期間中は絶食していますが、こちらは育児中に採餌と授乳を繰り返すアシカ類とは異なり、多くのアザラシと共通しています。

母親たちは脂肪を多く含む母乳を3週間ほど子供に与えて育てます。

離乳するころ、子供の体重は出生時よりも100㎏近く増加していますが、一方の母親は授乳期間中、毎日最大で8㎏もの体重を失います

子供も子供で、離乳後に母親から独立してもしばらくは海岸に残り、泳ぎの練習をしつつ過ごします。

もちろん絶食しているため、彼らがようやく海に出るころには離乳時の体重の3割も軽くなります。

このようにミナミゾウアザラシの繁殖スタイルは他の鰭脚類には見られない、スケールの大きい独特なものとなっています。

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オスもメスも繁殖が終わると海に出て採餌海域に回遊します。

この時、特に亜南極圏の島々で繁殖した個体たちは、餌生物が豊富にいる南極半島周辺まで長距離を移動します。

その距離はなんと3,000㎞以上。

ここまでの大移動ができるのも、彼らの体の大きさあってのことです。


また、彼らは鰭脚類では最も深くまで潜ることができます。

ミナミゾウアザラシは繁殖期や換毛期を除く時間はすべて海で過ごします。

メスは1年の85%以上を、繁殖期にメスよりも長く陸上にいるオスでは80%近くを海で過ごします。

そんな彼らはオスもメスも2,000m以上の深さまで潜ることができ、2時間も潜水することができます。

水の抵抗が小さい体を持つ鰭脚類は、酸素を肺ではなく筋肉中や血中に多く保持することで長時間潜水することができますが、ミナミゾウアザラシの潜水能力は中でも圧倒的です。

彼らのように体が大きくて深くまで潜る動物は、沈殿する有機物を再び海面付近に持ってくる役割を果たします。

これは鯨類ポンプと呼ばれ、海洋生態系に大きく貢献しています。


何もかもが規格外な鰭脚類・ミナミゾウアザラシ。

その大きさゆえ観察は容易だろうと思いきや、多くの時間を海で過ごし、しかもほとんど水面に上がってこないため、その生態はまだ詳しく解明されていません。

ミナミゾウアザラシ
Photo credit: Liam Quinn

ミナミゾウアザラシの生態

生息地

南極および亜南極の14の島々で繁殖します。

繁殖のうち50%がサウスジョージアで、21%がケルゲレン諸島で行われます。

採食は南緯40度から南極までの海域で見られます。

形態

体長はオスが4.2~5.8m、メスが2.6~3m、体重はオスが2~4t、メスが400~900㎏で、体サイズの性的二型が哺乳類では最大となります。

大きな鼻はオスだけが持ち、繁殖時の音声をより大きく響かせる効果を持ちます。

ミナミゾウアザラシ
Photo credit: Vince Smith

食性

ハダカイワシ類やノトテニア類といった魚類やイカ類を主食としています。

採食は通常200~700mの層で行われ、潜水時間は20~30分です。

捕食者にはシャチがおり、ヒョウアザラシも子供を捕食することがあります。

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行動・社会

繁殖は9月から11月にかけて行われ、その後、採餌回遊に出かけます。

そして1月から3月にかけての換毛期を陸で過ごし、再び採餌回遊を行います。

未成熟個体は南半球の冬には陸で休息(ホールアウト)することもあります。

海では単独性と考えられていますが、繁殖場では1,000頭近くが集まることもあります。

上陸中は涼むためか、泥や砂を前肢でかけて過ごす姿が見られます。

繁殖時、ハーレムを持てなかったオスは隙を見てメスと交尾することが知られています。

繁殖

メスは約4ヵ月の着床遅延を含む約11ヵ月の妊娠期間を終え、繁殖場への上陸後3~7日で出産します。

赤ちゃんは体重25~50㎏で、黒い新生子毛(ラヌーゴ)で生まれますが、生後10日頃から換毛が始まり、次第に銀色に、そして成長するにつれて大人の色になります。

母親は子の離乳の数日前にオスと交尾し、子の離乳の数日後には子と別れて海に入ります。

一方、子供は離乳後も4~6週間、他の子と一緒になってしばらく海岸で過ごしたのち、回遊に出かけます。

性成熟にはオスが5~8歳、メスが3~6歳で達します。

寿命はオスが最大14年、メスでは20年ですが、10歳を超えて生きるオスはわずかです。

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人間とミナミゾウアザラシ

絶滅リスク・保全

ミナミゾウアザラシは数千年前からオーストラリアや南米の原住民によって、狩猟されていました。

また、19世紀には彼らの暑いブラバー(脂皮)を狙った商業的な狩猟がサウスジョージアで始まり、これにより個体数が減少します。

しかし1964年、商業的な狩猟が終了してからは個体数を増やし、今では65万頭が生息していると言われています。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。


大きな脅威は存在しませんが、漁業による餌生物の減少や、温暖化による病気の蔓延などが懸念されています。

一方、温暖化による南極の氷の減少は、彼らの採餌海域を広げるため、ミナミゾウアザラシにとってはプラスの影響を与える可能性があります。

ミナミゾウアザラシ
Photo credit: Vince Smith
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動物園

日本ではミナミゾウアザラシを見ることはできません。

かつて近縁のキタゾウアザラシが山形県の加茂水族館で飼育されていましたが、すでに亡くなっています。

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