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トウブハイイロリス

トウブハイイロリス
©2012 Shenandoah National Park : clipped from the original
目次

トウブハイイロリスの基本情報

英名:Eastern Gray Squirrel
学名:Sciurus carolinensis
分類:齧歯目 リス型亜目 リス科 リス属
生息地:カナダ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

トウブハイイロリス
Photo credit: galihampshire

参考文献

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ドングリとの競争

北米東部に広く分布し、ヨーロッパなどにも導入され、外来種として定着しているトウブハイイロリス。

エサがあれば人間の居住地にも姿を現す彼らは、ヤマネなどのように冬眠して冬を越すという戦略をとりません。

ではどのようにしてエサが少ない冬を乗り切るかというと、彼らは貯食で越冬します。

リスにおける貯食行動とは、エサが豊富な時期に木の実などエサとなるものを地中に埋め、エサが少なくなる時期にそれらを掘り起こして食べるというものです。

リスによる木の実の採食は、樹木からしたら迷惑極まりないですが、貯食された種子の中には冬になってもリスたちに食べられず、そのまま春になって発芽できるものも存在します。

そのため、貯食行動は種子散布の役割を持つ側面があると考えられています。


さて、ドングリとはブナ科の実の総称ですが、北米のブナ科であるシラカシ類(Quercus)とアカガシ類(Lobatae)もまた、ドングリを実らせます。

しかし両者は発根のタイミングが異なります。

シラカシ類のドングリは、落下するとすぐ発根するのに対し、アカガシ類のドングリは落下後そのまま越冬し、春先に発根します。

この2種のドングリに対し、トウブハイイロリスは異なる採食戦略を見せます。

落下後すぐに発根するシラカシ類のドングリは見つけ次第食べる一方、発根しないアカガシ類のドングリは貯食に回すのです。

この習性は野外で生活したことがない飼育個体でも観察されることから、遺伝的な要素を兼ね備えているようです。


ちなみに、シラカシ類のドングリが落下後すぐに発根するのは、トウブハイイロリスのような貯食する動物への対抗策である可能性があります。

つまり、落下後発根せず動物たちに貯食されるよりは、すぐに発根して捕食を避けようという対抗策です。

興味深いことに、これに対し、トウブハイイロリスはシラカシ類のドングリを見つけると胚芽を食いちぎり発根しないように処理してから貯食するという行動を見せます。

こちらは先ほどと違って飼育個体や若齢個体ではうまくできないことがあるため、何らかの学習要素があると考えられます。

何とも面白いドングリとリスの競争ですが、さらにさらに、シラカシ類のいくつかの種のドングリはこうしたリスの対抗策を受け、ドングリにいくつか胚軸を持たせることで、どれかが食いちぎられても残った胚で芽を出すという驚くべき策を講じます

このように、複数種が互いに影響を与えながら進化していくことを共進化と呼びます。

そして、その中でも互いに相手を上回ろうと形質の変化がエスカレートしていくことを軍拡競争と言います。

自然界には様々な軍拡競争が存在しますが、トウブハイイロリスとシラカシ類のこの対抗戦は、哺乳類が関係するそのよい一例でしょう。

トウブハイイロリス
Photo credit: Shawn Taylor

トウブハイイロリスの生態

生息地

下層植生が多様な落葉樹林や混交林などに生息します。

水が近くに存在しないところには生息しません。

アイルランド、イタリア、南アフリカ、イギリスに導入されており、野生に定着しています。

形態

体長は25㎝前後、体重は350~750g、尾長は15~25㎝で、体サイズに性差はありません。

分布域の北部では真っ黒いメラニズム個体が見られます。

遺伝子変異によりメラニンを産生できないアルビノも存在しますが稀です。

トウブハイイロリス
Photo credit: Morgan

食性

種子やナッツ、蕾、花、菌類、鳥の卵などを食べます。

夏には昆虫も食べます。

捕食者にはアメリカミンクなどのイタチ類、アカギツネボブキャットカナダオオヤマネコオオカミコヨーテアライグマピューマなどの哺乳類の他、アカオノスリなどの猛禽類がいます。

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行動

昼行性で薄明薄暮時に最も活発になります。

単独性でなわばり性はなく、行動圏は他個体と大幅に重複します。

行動圏は0.5~10haでオスの方が広いです。

成長し独立すると生まれた場所から数㎞離れることもあります。

トウブハイイロリスは樹高10m付近に巣を作ります。

巣は枝の上などにはっぱを敷いて作られたり、樹洞が利用されたりします。

春から夏に生まれた赤ちゃんは前者で、冬から春に生まれた赤ちゃんは後者で育てられる傾向があります。

ただ、母親は寄生虫を避けるためか、樹洞で生まれた赤ちゃんを葉っぱの巣に移動させることもあります。

トウブハイイロリス
シラカシ類の一種、ホワイトオーク(Quercus alba)上にできた巣 | Photo credit: Matt Jones

社会

コミュニケーションにはしっぽや音声などが使われます。

オスには序列が存在します。

繫殖期、複数のオスがメスを追いかけますが、優位な数匹のみが交尾できます。

交尾は30秒以内に終わり、オスもメスも複数の異性と交尾することがあります。

射精後、メスの膣には交尾栓という蝋のような塊が見られます。

これには精子の流出を防いだり、後からの交尾を防いだりする効果があると思われますが、トウブハイイロリスでは、メスがこの交尾栓を自ら抜くことが観察されています

繁殖

北部ではこれにやや遅れますが、繁殖期は12月から2月、5月から6月の2シーズン存在します。

そのため、メスは年に最大2回繁殖できます。

妊娠期間は40~45日で、一度の出産で通常2~3匹の赤ちゃんが生まれます。

赤ちゃんは出生時13~18g、無毛で目は閉じています。

生後10週ごろ完全離乳し、生後9ヵ月には大人のサイズになります。

メスは早いと生後半年頃繁殖を始める一方、オスは生後11ヵ月頃性成熟に達します。

寿命は野生で2~3年ですが、飼育下では10年以上生きる個体もいます。

トウブハイイロリス
Photo credit: Heather Hopkins

人間とトウブハイイロリス

絶滅リスク・保全

トウブハイイロリスに大きな脅威はありません。

各地に北米の今まで生息していなかった地域だけでなく、北米以外の国々にも人為的に導入され、定着しており、個体数は増加傾向にあるとされています。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

Eastern Gray Squirrel |The IUCN Red List of Threatened Species

トウブハイイロリス
Photo credit: Pierre-Selim

動物園

トウブハイイロリスを日本で見ることはできません。

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