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マレーバク

マレーバク
©2014 Andy Hay : clipped from the original
目次

マレーバクの基本情報

英名:Malay Tapir
学名:Tapirus indicus
分類:奇蹄目 バク科 バク属
生息地:インドネシア、マレーシア、ミャンマー、タイ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

マレーバク
Photo credit: Mohd Fazlin Mohd Effendy Ooi

体色の効果

バク科4種のうち唯一アジアに生息し、最も大きいバクであるマレーバク。

シルエットだけでバクを分類するのは困難ですが、色まで見れば一目瞭然。

マレーバクを他のバクと分けるものは、なんといってもその体色です。

黒と白で明確に分けられたバクの体色は、哺乳類の中でも特に印象的です。


なぜマレーバクはこのような体色をしているのでしょうか。

現在、この体色はおそらく捕食者に対して発達させてきたものだろうと考えられています。

明確に二分された体色の一部が強調されることで、体全体のシルエットがあいまいとなり、捕食者に見つかりにくくなるのです。

こうした効果は分断効果と呼ばれ、哺乳類でもシャチイロワケイルカジャイアントパンダなどに見ることができます。

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ところで、マレーバクは生まれた時からこのような色なのでしょうか。

答えは、否。

彼らの赤ちゃんは黒地に白い斑点や水平方向に伸びる模様という、大人とはまた別の体色をしています。

このような模様は、輪郭を曖昧にする分断効果だけでなく、周囲の環境に溶け込むカモフラージュの効果も持ちます。

バクは森林に生息するため、周囲の木々や木漏れ日にこの体色がうまく溶け込むのです。

このような子供の体色はマレーバクだけでなく、バク全体に見られるため、子供の体色は現在のバクたちの祖先種にも見られたと考えられます。


ちなみに他のバクの場合、この子供の模様は成長していくうちに消えていきますが、マレーバクの場合、子供の模様の消失と大人の体色の発現が同時に起こります。

生後2ヵ月頃の子供の体色は、子供の体色に大人の体色がかぶさったような何ともどっちつかずの様相を呈しています。

なぜバクのうちマレーバクだけがこのような体色をしているのかはよくわかっていませんが、この体色が彼らを彼らたらしめているのは間違いありません。

マレーバク
Photo credit: Bernard DUPONT
マレーバク
Photo credit: Jens Cederskjold

マレーバクの生態

生息地

標高2,150mまでの、熱帯湿潤林に生息します。

一次林だけでなく、人の手が入った二次林にも生息することができます。

形態

体長は1.8~2.5m、肩高は0.9~1.1m、体重は250~540㎏、尾長は約10㎝で、メスの方がオスよりも大きくなります。

また、マレーバクはバク科では最大種となります

指は前足に4本、後足に3本あります。

前足の1本は小さく、地面につくことはありません。

奇蹄目の特徴通り、足の中軸は第三指にあります。

皮膚は厚いところで2.5㎝にもなり、捕食者からの攻撃を防ぎます。

マレーバク
Photo credit: Allie_Caulfield

食性

毎日体重の5%ほどの重量のエサを食べるとされています。

ブラウザーである彼らは、300種以上の植物の葉や果実、樹皮などを食べます。

長い鼻を使って高いところのエサも食べ、時には10mの木を倒して葉を食べることもあります。

このほか、草や水生植物も食べます。

果実をよく食べますが、種を噛み、消化するため、種子散布者としての役割は小さいと考えられています。

彼らの胃は単純で、食物は主に盲腸で発酵され、その後吸収されます。

捕食者にはトラヒョウが知られています。

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行動・社会

主に単独性ですが、なわばり性は弱いとされており、偶発的に複数が同所で見られることがあります。

行動圏は1~25㎢で、メスの方が広いようです。

主に夜行性ですが、日中見られることも少なくありません。

コミュニケーションには、鋭い嗅覚を用いたにおいによるものの他、鳴き声でも行われます。

泳ぎが上手で、カバのように水底を歩くように泳ぎ、90秒ほど潜水することができます。

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繁殖

繁殖は5月から6月にかけて行われます。

交尾相手は繁殖期内で変わらないとされます。

メスの出産間隔は約2年で、11~13ヵ月の妊娠期間ののち、一頭の子供を産みます。

双子は野生では一度も確認されていません。

育児は母親によってのみ行われ、赤ちゃんは生後数時間で母親について歩くようになります

生後2週ごろには固形物を食べ始めますが授乳は生後6~8ヵ月まで続きます。

その後1~2歳で独立し、性成熟には2~3歳で達します。

寿命について、飼育下では40年以上生きる個体もいます。

マレーバク
Photo credit: Jens Cederskjold

人間とマレーバク

絶滅リスク・保全

マレーバクの成熟個体数は2,500頭以下とされ、個体数は現在も減少中であると考えられています。

IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅰに記載され国際取引は禁止されています。


主な脅威は生息地の破壊です。

木材目的やオイルパームなどのプランテーションを目的とした森林伐採は、マレーバクの生息地を奪います。

このほか、まずいとされているものの肉目的の狩猟やロードキルなども脅威となっている可能性があります。

このような脅威にさらされたマレーバクは、この36年の間で個体数を半減させたと推測されています。

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動物園

マレーバクは全国各地の動物園で見ることができます。

中でも、兵庫県の神戸どうぶつ王国、愛媛県のとべ動物園と長崎県の長崎バイオパークでは、アメリカバクにも会うことができます。

アメリカ大陸とアジアのバク、何が違うかぜひ間近で観察してみてください。

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