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ミュールジカ

ミュールジカ
©2018 Tom Koerner/USFWS : clipped from the original
目次

ミュールジカの基本情報

英名:Mule Deer
学名:Odocoileus hemionus
分類:鯨偶蹄目 シカ科 オジロジカ属
生息地:カナダ、メキシコ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ミュールジカ
Photo credit: Jon Nelson

北米西部の象徴

アラスカからメキシコまで、北米西部の様々な環境に生息するミュールジカ。

ミュールという言葉は、オスのロバとメスのウマを掛け合わせたラバを意味します。

ラバのようながっしりした体躯と頭の長さの4分の3にもなる大きな耳を持つ彼らは、優れた聴覚を持ちますが、視覚や嗅覚も鋭く、捕食者の感知や個体間のコミュニケーションに役立っています。

彼ら自身は同じシカ科動物のワピチのようによく鳴くわけではありませんが、足や蹄、尾に複数の臭腺を持っており、それぞれの臭腺からでるにおいは、危険の伝達や個体識別などの役割を果たしています。

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他のシカ同様、オスの方がメスよりも大きく、アントラーや枝角と呼ばれる角はオスにのみ生えます。

アントラーはウシの角とは異なり、毎年生え変わります。

ミュールジカは繁殖期が終わった1月から3月にかけてアントラーを落とし、その後再びアントラーを生やします。

成長段階にあるアントラーの周りは皮膚で覆われ、血が通っていますが、この時のものは袋角と呼ばれます。

成長したアントラーは11月ごろから始まる繁殖期の前の秋ごろまでには、皮膚を落とし完全になります。

そして完全体となったこのアントラーを使って、オスたちはメスをめぐって争うのです。

オスのアントラーは5~6歳で最大となりますが、多くのメスと交尾できるオスは、こうした体が成熟したオスだけです。

オスは2歳までには生殖能力を獲得しますが、彼らが他のオスと争いメスを獲得できるようになるのは4歳以降のこと。

このような彼らの繁殖様式は、シカ科の典型です。


ところで、ミュールジカの分布域には、彼らに最も近縁なオジロジカも存在します。

交雑することも稀にあるほど似ている彼らには、見分けるポイントがいくつかあります。

最もわかりやすいのはしっぽです。

オジロジカという割に、オジロジカのしっぽで白いのは裏側のみ。

一方のミュールジカのしっぽは、こちらの方がオジロジカの名前にふさわしいと思ってしまうほど全体が白く、先だけが黒です。

また、危険を感じた際や走る際、オジロジカがしっぽを上げる一方、ミュールジカではそれが見られないのも相違点です。

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そんなミュールジカは、北米では娯楽目的の狩りの重要な標的となっています。

特に大きな角を持つオスは、ハンターの威信を示す存在です。

ミュールジカの個体数は、国や州、自治体によって管理されており、狩猟は彼らの脅威とはされていません。

むしろ狩猟を通してミュールジカは人間の身近な存在とさえなっており、彼らは北米西部の象徴的な動物として広く愛されているそうです。

ミュールジカ
Photo credit: USFWS Moutain-Prairie

ミュールジカの生態

生息地

標高3,000mまでの温帯林や半砂漠、草原、山地林など様々な環境に生息します。

形態

体長は125~168㎝、肩高は80~106㎝、体重はオスが45~150㎏、メスが43~75㎏でオスの方が大きくなります。

特にオスでは額のV模様が顕著になります。

体色は夏に赤茶、冬に青いグレーになります。

ミュールジカ
袋角状態のオスの群れ | Photo credit: USFWS Mountain-Prairie

食性

ブラウザーである彼らは、葉や花、エサ、蕾を食べますが、ウシやワピチほど消化効率は良くないため、高質なエサを選択的に食べます

捕食者にはピューマコヨーテボブキャットアメリカクロクマ、イヌワシ、ノイヌなどがいます。

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行動・社会

メスが母系の群れで暮らす一方、オスは単独やオスだけの群れで暮らします。

季節移動が見られ、雪や気温、雨などを要因として、標高などの環境を変えます。

夏と冬の行動圏は200㎞以上離れることがありますが、毎年同じ場所を利用します。

繁殖

繁殖は11月から1月にかけて見られます。

メスは約7ヵ月の妊娠期間の後、約2㎏の斑点のある赤ちゃんを1~2頭産みます。

成熟するほど2頭を生む傾向にあります。

赤ちゃんは茂みなどに生み落とされ、半日以内に歩けるようになりますが、そこで10日ほど隠れて過ごします。

離乳は生後2週ごろから始まり、16週までに完了します。

性成熟は1.5~2歳で、オスは成長すると群れを離れていきます。

寿命は野生で約10年、飼育下では20年以上生きるものもいます。

ミュールジカ
Photo credit: USFWS Mountain-Prairie

人間とミュールジカ

絶滅リスク・保全

ミュールジカの個体数は各地で安定していますが、一部では減少傾向にあります。

家畜との競合や生息地の破壊、ノイヌによる捕食、そして慢性消耗症病(CWD)伝達性海綿状脳症(TSE)などの病気は脅威となりえます。

特にメキシコのセドロス島にいる亜種は、ノイヌによる高い捕食圧などを理由に絶滅が懸念されています。

全体として絶滅は心配されておらず、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ミュールジカ
Photo credit: USFWS Mountain-Prairie
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動物園

日本でミュールジカを見ることはできません。

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