書籍情報
書名:知られざる動物の世界8 小型肉食獣のなかま
著者:Pat Morris, Amy-Jane Beer
訳者:鈴木聡(福井市自然史博物館学芸員)
監訳者:本川雅治(京都大学総合博物館教授)
出版社:朝倉書店
発行年:2013年
価格:3,400円(+税)
ページ数:113ページ
小さな肉食獣だけの図鑑
皆さんは肉食動物と聞いてどんな動物を思い浮かべますか?
たてがみが雄々しいライオン、模様が美しいトラ、スレンダーで足が速いチーター、恐ろしいクマ、仲間思いのオオカミなどなど、動物園ではおなじみの人気者のことを、その印象と共に想像する人も少なくないかもしれません。
しかし、肉食動物は何も彼らのように大きなものばかりではありません。
意外に思われるかもしれませんが、アライグマやレッサーパンダ、オコジョ、イイズナ、カワウソ、ラッコ、スカンク、ミーアキャットなど、私たちにもなじみのある小さくて可愛らしい動物も肉食動物なのです。
しかも、その生態は大型肉食動物よりも多様です。
果実食の者、魚食の者、肉食の者、雑食の者、半水生の者、水生の者、樹上性が強い者、穴を掘る者、単独で暮らす者、社会を作る者、メスだけの集団を作る者、季節によって毛の色を変える者、においで攻撃する者などなど、その多様性には驚くばかりです。
本書は、ライオンやオオカミなど有名で人気のある肉食動物ではなく、このような小さな肉食動物たちに焦点を当てた、珍しい図鑑です。
本書は、全14巻から構成される『知られざる動物の世界』シリーズの8巻目となる図鑑です。
全14巻の内、哺乳類を扱うものは『食虫動物・コウモリのなかま』と本書だけです。
本書は、小型の食肉類、現在の分類によるところのアライグマ科、レッサーパンダ科、イタチ科、ジャコウネコ科、マングース科、スカンク科、マダガスカルマングース科、キノボリジャコウネコ科、オビリンサン科の動物が紹介されます。
紹介される動物はアライグマやレッサーパンダをはじめ、比較的有名な小型肉食動物27種です。
ただ、解説はされないものの、イラストだけで登場する者もいるため、全てを合わせればその倍は行くでしょう。
各動物は絵や写真と共に2~6ページを使って解説されます。
解説は詳しく、生息地や体長、食性はもちろんのこと、生態や繁殖についても言及されます。
また、哺乳類の概論や各科の概論なども揃っており、複数のレベルでの特徴をとらえることができます。
さらに、巻末には「機会的捕食者」、「着床遅延」、「ムスク」、「蹠行性(しょうこうせい)」などの用語が44も説明された辞典が付いているので、小型肉食獣への理解をさらに深めることができます。
日本にいる肉食動物と言えば、ツキノワグマやヒグマが思い浮かびますが、小型肉食動物に目を向ければ、ニホンイタチやニホンアナグマなどの固有種や、アライグマ、マングース、ハクビシンなどの外来種が複数存在します。
意外にも私たちの身近で生活を送る小型肉食獣たちについて知ってみたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
その小さな世界にある多様性に心躍ることと思います。