ヨーロッパハタリスの基本情報
英名:European Ground Squirrel
学名:Spermophilus citellus
分類:齧歯目 リス型亜目 リス科 ハタリス属
生息地:オーストリア、ブルガリア、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、モルドバ、北マケドニア、ポーランド、ルーマニア、セルビア、スロバキア、トルコ、ウクライナ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

参考文献
ヨーロッパの地上性リス
リス科に属するいわゆるリスの仲間は、およそ300種が知られていますが、それらはニホンリスやキタリスなど樹上で暮らす樹上性リス、マーモットやオグロプレーリードッグなど地上で暮らす地上性リス、モモンガやムササビなど滑空する滑空性リスに大別できます。
このうち樹上性リスと滑空性リスは特に東南アジアにその約半分の種が生息しています。
一方、地上性リスはその3分の2が北米に生息します。
最も分布域が広いのは樹上性リスで、オセアニアおよび南極大陸以外の大陸に生息しています。
これはリスという生き物が本来樹上性であったことに関係しているかもしれません。
一方、地上性リスはオセアニア、南極、そして南米にも不在で、滑空性リスにいたってはこれに加えアフリカやヨーロッパにも不在です。





さて、ヨーロッパハタリスは、その名の通りヨーロッパ、とくに東ヨーロッパに生息します。
ハタリスとは地上性リスの一種の呼び方で、地上性リスは他に、シマリスやジリスとも呼ばれます。
ヨーロッパにはリスがあまり生息しておらず、地上性リスもその例外ではありません。
ヨーロッパに生息する地上性リスは、ヨーロッパハタリスに加え数種類だけです。
そんなリスが珍しいヨーロッパに生息する彼らですが、その生態は他の地上性リスと大きくは変わりません。
地上性リスは地中に巣穴を作りますが、ヨーロッパハタリスも自分で巣穴を掘ります。
彼らの巣の出入り口は最大5つあり、ここで休息や出産、育児などの生活を営みます。
このほか、彼らは逃避用のシンプルな巣を行動圏内にいくつか持っています。
生活の要となる巣では、これも他の多くの地上性リスが見せる行動ですが、冬眠が見られます。
ヨーロッパハタリスは8月ごろから冬眠に入り、3月~4月にかけて目覚めます。
この時、体温は通常37℃のところ6℃まで下がります。
冬眠時、それまでに貯めておいたエサを食べつつ冬を乗り越える者もいますが、ヨーロッパハタリスは主に脂肪を冬眠時のエネルギー源とします。
そのため、彼らの冬眠明けの体重は、冬眠前の約半分にまで落ちます。
彼らが他のリスと違うのは、彼らが置かれている状況でしょうか。
地上性リスは130種ほどが知られていますが、そのうちIUCNのレッドリストにおいて絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類、ⅠB類、ⅠA類)の評価をされているのは10種程度しかいません。
一次消費者である体の小さいリスでは、分布域が広く個体数が多いため絶滅が心配されていない種が多いですが、生息環境の改変が止まらないこのヨーロッパハタリスは絶滅危惧種に指定されています。
Europäisches Ziesel │ Neuigkeiten aus dem Nationalpark Donau-Auen

ヨーロッパハタリスの生態
生息地
標高2,593mまでの、草の丈が短い開けた草原に暮らします。
ゴルフ場や牧場などにも生息します。
形態
体長はオスが17.6~22.8㎝、メスが17.4~21.7㎝、体重はオスが125~380g、メスが131~353g、尾長は3~9㎝で、オスの方が若干大きくなります。
小さいですが頬袋を持っており、エサを一時的にためることができます。

食性
植物の緑の部分や根、茎、種子、豆類、昆虫、小型哺乳類などを食べます。
後で食べるために巣にエサを貯める行動を見せます。
捕食者にはイイズナやヨーロッパケナガイタチなどのイタチ類の他、ヘビ類や猛禽類がいます。


行動・社会
昼行性の彼らは、地上にいる時間の7割は採餌に充てます。
コロニーと呼ばれる集団で生活しますが、社会性は弱く、巣穴は一人一つ持ちます。
地上では両足で立って周囲の危険の有無を確認する行動がよく見られ、危険を感じた場合は音声を使いつつ巣穴に逃げます。
音声は8種類確認されています。
繁殖期になるとオスは行動圏を広げ、より攻撃的になります。
繁殖期、オスとメスはそのシーズンのみのペア関係を作ります。
繁殖
繁殖は冬眠が明けた時期から3週間後に見られます。
メスは年に一度出産します。
妊娠期間は約27日で、一度に5g程度の赤ちゃんが2~9匹生まれます。
育児は母親の役割で、赤ちゃんは生後49~56日で離乳し、その後独立していきます。
性成熟はオスが1~2歳ごろ、メスは1歳までに達します。
寿命は野生で2~3年、飼育下では長くて7年程度です。

人間とヨーロッパハタリス
絶滅リスク・保全
ヨーロッパハタリスは個体数を現在も減らし続けているとされており、クロアチアやドイツではすでに絶滅しています。
ポーランドでも1970年代に絶滅しましたが、2005年以降の再導入により復活しています。
特に東欧で拡大する農業や道路、インフラの建設による生息環境の減少が最大の脅威です。
また、害獣としての駆除や、豪雨、洪水も脅威となっています。
こうした傾向は今後も続くと考えられており、将来的に個体数は半減するのではと推測されています。
IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
Spermophilus citellus | The IUCN Red List of Threatened Species
動物園
ヨーロッパハタリスを日本で見ることはできません。


