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ナンキョクオットセイ

ナンキョクオットセイ
©2012 Brian Gratwicke : clipped from the original
目次

ナンキョクオットセイの基本情報

英名:Antarctic Fur Seal
学名:Arctocephalus gazella
分類:食肉目 アシカ科 ミナミオットセイ属
生息地:オーストラリア(マッコリ―島、ハード島とマクドナルド諸島)、ノルウェー(ブーベ島)、フランス(ケルゲレン諸島)、南アフリカ、イギリス(サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島)
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ナンキョクオットセイ
Photo credit: Liam Quinn

参考文献

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最も南に住むアシカ

鰭脚類では最も長いひげを持つ(オスでは最大45㎝)ナンキョクオットセイ、彼らはアシカ科では最も南に生息します。

鰭脚類はアシカ上科のアシカ科およびセイウチ科、そしてアザラシ科に分けられ、両者は3,000万年近くも前に分岐したとされています。

このうち、アシカのなかまは陸上での移動がアザラシよりも得意です。

比較的長い四肢を持つナンキョクオットセイも、他のアシカ同様後肢を前方に曲げ、前肢で体重を支えながら陸上を移動します。

水中でのスピードよりは劣りますが、最高時速は20㎞/hと案外素早く移動することができます。

また、泳ぐ際は後肢を原動力とするアザラシと異なり、前肢のヒレを推進力の源とします。

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アザラシとは大きく異なるアシカ科のなかまは、さらにアシカとオットセイに大きく分けられます。

ナンキョクオットセイは当然オットセイのなかまです。

オットセイは防寒のための被毛が特徴的です。

被毛は粗い保護毛とその下に生える密な下毛からなります。

アシカよりも上質な被毛を持つオットセイは、長らく狩りの対象となってきました。

ナンキョクオットセイもその例にもれず、特に商業的な狩猟が栄えた19世紀終わりごろには絶滅の危機に瀕します。

この時の個体数は1,000頭以下にまでなったとされています。

しかし、狩猟が禁止され保全活動が進んだこと、オキアミを食べるヒゲクジラが捕鯨により減少したことなどが理由で次第に個体数を回復させ、今では絶滅の危機を脱しています。

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ヒゲクジラの減少がなぜナンキョクオットセイの増加につながるかというと、ナンキョクオットセイもまた、ヒゲクジラの主食であるオキアミをよく食べるからです。

つまり、ヒゲクジラが捕鯨により減少したことで、ナンキョクオットセイが利用できるオキアミが増え、彼らの増加につながったのです。

特に彼らの繁殖の95%が行われるサウスジョージアなどではナンキョクオキアミが主食となっています。

彼らはこのオキアミを歯で漉しとって食べます。

このような採餌方法は濾取採餌(filter feeding)と呼ばれ、鰭脚類では他にカニクイアザラシヒョウアザラシに見られます。

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そんなナンキョクオットセイですが、彼らには特筆すべき特徴があります。

それは、リューシズムの存在です。

リューシズムとは遺伝子の変異により体色が白くなることで、ライオントラのリューシズム、それぞれホワイトライオン、ホワイトタイガーが有名です。

黒い色素(メラニン)を生み出せないアルビニズムとは異なるため、ナンキョクオットセイのリューシズム個体のヒレや鼻などは黒いままです。

ナンキョクオットセイの場合、800分の1の確率でこのリューシズムが生まれるようです。

このようなリューシズムという変異が彼らの歴史の中で保存されてきたのは、彼らが最も南の寒い地域に生息するアシカということもきっと関係していることでしょう。

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ナンキョクオットセイ
Photo credit: Liam Quinn

ナンキョクオットセイの生態

生息地

サウスジョージアについで多くの個体が生息するノルウェー領のブーベ島など、亜南極の島々に生息します。

プリンスエドワード島やクローゼー諸島ではアナンキョクオットセイと、オーストラリアの世界遺産マッコーリ―島ではアナンキョクオットセイとニュージーランドオットセイと共存しており、交雑も確認されています。

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形態

体長はオスが1.8m前後、メスが1.2~1.4m、体重はオスが130~200㎏、メスが20~50㎏で性的二型が顕著です。

被毛は1㎠に4.5万本生えており、オスでは首周りのタテガミが特徴的です。

ナンキョクオットセイ
Photo credit: NOAA Photo Library

食性

ハダカイワシ類、ノトテニア類などの魚類やナンキョクオキアミ、イカ類を食べます。

また、オウサマペンギンやマカロニペンギンなどを襲うこともあります。

捕食者にはシャチが知られており、子供はヒョウアザラシニュージーランドオットセイに捕食されることがあります。

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行動・社会

餌が海面付近まで上昇する夜に主に採餌します。

200m以上潜水することができますが、普通は30mまでの範囲を潜水します。

繁殖期以外は海に広く分散して生活するとされていますが、若い個体やオスの一部は年中繁殖場(ルッカリー)で見られることもあります。

オスは10月終わりごろ、繁殖場に上陸し、音声やディスプレイ、物理的攻撃を駆使してなわばりを争います。

なわばりを確立できたオスは最大で20頭以上のメスと交尾することができます。

メスは11月中頃に上陸し、その1~2日後に出産します。

そして出産から約1週間後、オスと交尾し、最初の採餌トリップに出かけます。

母子は音声やにおいによって他と識別しています。

繁殖

メスは着床遅延を含む約11ヵ月の妊娠期間の後、3~6㎏の赤ちゃんを一頭産みます。

出産後、母親は1週間ほど絶食して育児したのち、オスと交尾し、4~5日の海での採餌に出かけます。

その後、子の元に戻り1~3日育児すると、再び採餌に出かけます。

採餌期間は子が成長するにつれ伸び、このサイクルは子が離乳する約4ヵ月間続きます。

性成熟にはオスが7歳、メスが3歳で達し、寿命はオスが最大15年、メスが最大25年です。

ナンキョクオットセイ
Photo credit: Liam Quinn

人間とナンキョクオットセイ

絶滅リスク・保全

かつて狩猟により個体数を大きく減らしましたが、1950年代には200万~300万頭にまで回復し、現在もその程度の個体数を維持しているとされています。

これはオットセイの中では最多です。絶滅はもはや危惧されておらず、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。


一方、地球温暖化による餌生物の減少や生息環境の変化、そして一度個体数を減らしたことによる遺伝的多様性の低下(ボトルネック効果)に起因する病気の蔓延は彼らにとっての脅威です。

また、程度は低いものの漁業による餌生物の減少、漁具や海洋ゴミへの絡まりは今後脅威となる可能性があります。

ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されています。

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動物園

日本ではナンキョクオットセイを見ることはできません。

ナンキョクオットセイ
Photo credit: NOAA Photo Library
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