シママングースの基本情報
英名:Banded Mongoose
学名:Mungos mungo
分類:マングース科 ガンビアマングース属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、エリトリア、エスワティニ、エチオピア、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、マラウィ、マリ、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、ソマリア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ、ザンビア
保全状況:LC〈軽度懸念〉
一斉出産
シママングースは、7~40頭から成る、パックと呼ばれる集団を作ります。
パック内には序列があり、メスが必ずオスよりも優位とは限りませんが、最も高齢のメスがその頂点に立ちます。
優位メスはパックを統率し、パックがどこに採餌に行くかなどを決めます。
このような序列のある集団をつくるマングースには、他にコビトマングースなどがいます。
彼らのパックにも似たような序列があり、その特徴として、最も優位なオスとメスだけが繁殖できることが挙げられます。
しかし彼らとは異なり、シママングースは、パックのメス全員が繁殖することができます。
ただ、優位であればあるほど発情時期が早く、産む子供の数もおおいようです。
シママングースは、複数のメスが出産できるだけでなく、面白いことにメスたちは一斉に繁殖し、ほとんど同じ日に出産します。
こうして繁殖を同調させることで、捕食リスクと育児コストを減らし、できるだけ多くの子供を残そうとしているのです。
産まれた子供たちは、母親だけでなく群れのメンバー全員によって育てられます。
母親以外のオトナメスも子供を産んでいるので、赤ちゃんたちはそのメスたちからもお乳をもらうことができます。
これも一斉出産の利点でしょう。大人たちが巣穴の外に採食に出かけている間は、複数の若いオスやメスが巣穴に留まり、子供たちを守ります。
下の動画では、このヘルパーたちが他の集団から子供たちを必死に守る様子を見ることができます。
シママングースの集団同士は非常に敵対的です。
果たして彼らは敵から子供と巣穴を守ることができるのでしょうか。
このように、より多くの子供を残そうと繁殖の同調という戦略をとっているシママングースですが、子供の生存率は3~5割程度です。
これを成功と見るか否かは、是非彼らに聞いてみたいですね。
シママングースの生態
生息地
シママングースは、サハラ以南のアフリカ一帯に広く分布します。
サバンナや森林、草原、また、農村など人が住むところにも生息します。
地上で暮らし、主にシロアリ塚などを巣穴として生活します。
食性
シママングースは雑食性で、アリやシロアリ、甲虫などの昆虫や、トカゲ、ヘビなどの爬虫類、小型哺乳類、鳥類、卵、果実を食べます。
人間が出したごみを漁ることもあります。彼らは集団で暮らしますが、採餌は個別に行います。
ただ、ヘビなどを殺す際などは集団で攻撃することもあるようです。
このような食性から、彼らはイボイノシシと共生関係にあります。
イボイノシシの表面に付く寄生虫を食べるのです。
このようなウィンウィンの関係を下の動画で見ることができます。
一方、彼らを食べる捕食者には、リカオンや猛禽類などがいます。
形態
体長は30~45㎝、肩高は約15㎝、体重は1~2㎏、尾長は15~30㎝で、オスがメスよりわずかに重くなります。
行動
シママングースは昼行性で、特に朝と夕方に活発に動きます。
行動圏は1~2㎢で、日に2~10㎞を移動します。
なわばり性があり、なわばりはにおいでマーキングします。
なわばりの中にはいくつか巣穴があり、数日~数週間ごとに巣穴を移動します。
先ほどの動画では、赤ちゃんたちが大人たちに咥えられて巣穴を移動しているのを観察できます。
彼らの集団は比較的大きいので、他のマングースと比べると、巣穴の出入り口の数が多くなります。
繁殖
繁殖に季節性はなく、メスは出産後10日で発情を再開します。
パック内にはメスをめぐるオスの競争があり、優位オスはメスを劣位オスから守ります。
しかし、劣位オスは優位オスとメスの後を追い、優位オスの目を盗んで交尾することがあります。
メスの妊娠期間は60~70日で、2~4頭(最大6頭)の赤ちゃんが産まれます。
生後10日には目が開き、4~5週齢には大人についてエサを探し回るようになります。
性成熟には生後9~11カ月で達し、寿命は野生で5~10年、飼育下で最長12年になります。
人間とシママングース
絶滅リスク・保全
シママングースには、これといって大きな脅威はなく、また、その分布域の広さと個体数の多さゆえ、絶滅は危惧されていません。
レッドリストでは、軽度懸念の種として登録されています。
これも彼らの繁殖戦略のおかげかもしれませんね。
動物園
そんなシママングースですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ただ、ここにも登場したコビトマングースには、東京の上野動物園と大阪の天王寺動物園で見ることができます。
似たような生態をしているので、是非コビトマングースを観察してみてください。