ウンピョウの基本情報
英名:Clouded Leopard
学名:Neofelis nebulosa
分類:ネコ科 ウンピョウ属
生息地:バングラデシュ、ブータン、カンボジア、中国、インド、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉
雲豹
ウンピョウという名前は、彼らの体にある雲のような斑紋に由来しています。
その毛皮の美しさから、今でも密猟が絶えないウンピョウですが、彼らは毛皮以外の点でもかなりユニークなネコです。
ウンピョウは、ヒョウいう名前の通りヒョウ系統に分類されるものの、他の大型ネコの祖先からは約640万年前に分岐しています。
そのため、大型ネコにはない特徴をいくつも持ちます。
例えば、ウンピョウの犬歯は4㎝もあり、これは体に対する大きさとしてはネコ科一です。
ネコが獲物を捕らえる時、喉元に咬みついて窒息させる方法が良く取られますが、ウンピョウはこの長い犬歯で首の脊髄に咬みついて殺す方法も取ります。
また、口が開く角度もネコ科随一です。
ライオンやピューマが65度ほどしか口を開けられないのに対し、ウンピョウは90度以上も開くことができます。
最も特徴的なのは、木登りが得意な点です。
マレーシア語で“hariman-dahau”、日本語にすると「木の枝のトラ」と呼ばれるように、ウンピョウは、樹上性がネコ科で最も強いマーゲイに劣らず木登り上手です。
足首は後方に回転するので、後足だけで木にぶら下がれますし、頭から木を降りることもできます。
もちろん樹上で狩りをすることもあり、樹上生活者である霊長類をよく捕食しているほどです。
そんなユニークなウンピョウですが、ウンピョウと名のつく動物はもう一種います。
それがスンダウンピョウです。
ウンピョウがアジア本土に生息するのに対し、スンダウンピョウはボルネオ島やスマトラ島に生息します。
かつて両種は同種とされていましたが、近年行われた遺伝子解析により、両種は140万年~290万年前に分岐していたことが分かりました。
両種は形態にも違いがあり、例えば犬歯はスンダウンピョウの方がやや長く、頭蓋骨は微妙な違いがあります。
また、斑紋や体色も違います。
ただ、このような違いがあるものの、すでに述べたユニークな生態は同じです。
ウンピョウもスンダウンピョウも、ネコ科動物の中で輝く個性を持っています。
ウンピョウの生態
生息地
ウンピョウは、東南アジア本土に生息します。
森林への依存度が高く、熱帯雨林を主として、標高3,000mまでの泥炭湿地林や乾燥林、マングローブなどに生息します。
食性
ウンピョウは肉食で、シカやイノシシといった中型哺乳類、スローロリス、シルバールトンなどの霊長類、ヤマアラシ、センザンコウ、ビントロング、パームシベット、齧歯類、魚類、豚、羊といった家畜や家禽を食べます。
ウンピョウはトラやヒョウ、ドールと一部共存していますが、エサをめぐった競合があるかは不明です。
形態
体長はオスが80~108㎝、メスが68~94㎝、肩高は50~55㎝、体重は10~25㎏、尾長は60~90㎝で、性的二型が見られます。
短い肢に広い足、太くて長いしっぽは彼らの樹上での移動においてバランスをとるのに役立っています。
行動
夜行性と考えられていますが、日中も活動することが分かってきています。
狩りは獲物の関係で地上で行うことが多く、樹上ではくつろいでいる時間の方が長いです。
また、ウンピョウは泳ぐのも得意です。
ウンピョウは単独性で、20~40㎢の行動圏を持ちます。
多くのネコがそうであるように、行動圏は他個体と重複しますが、中心部であるコアエリアは独占的に利用します。
行動圏は尿やひっかき傷でマーキングし、オスよりもメスの方が大きいと考えられています。
繁殖
繁殖についてもよく分かっておらず、少ない情報は飼育個体のものです。
ウンピョウは季節繁殖している可能性が高いです。
発情期間は約1週間、妊娠期間は85~95日で、140~280gの赤ちゃんが通常2~3頭産まれます。
赤ちゃんは生後約10日で目を開き、6週齢には木に登れるようになります。
生後10~14週で離乳し、長くて10カ月齢まで母親と共に暮らします。
性成熟には生後20~30カ月で達し、出産間隔は10~16カ月です。
寿命は野生で11年と推測され、飼育下では最長17年です。
人間とウンピョウ
絶滅リスク・保全
ウンピョウは現在、いくつかの脅威に直面しています。
軽度であれば耐えられるものの、ウンピョウは森林の伐採や農地への転換に脆弱です。
人間による狩猟も大きな脅威です。
国際取引は禁止されている(CITES附属書Ⅰ)ものの、ウンピョウの毛皮は価値が高いため、現在も密猟、密輸が絶えません。
また、伝統的な薬にするために、ウンピョウの骨や牙、爪が利用されます。
台湾ではこのような狩猟のために、ウンピョウは絶滅したと考えられています。
ウンピョウの個体数は正確に分かっていないものの、それは減り続けていると推測されており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
動物園
そんなウンピョウには、日本の動物園でも会うことができます。
神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、高知県ののいち動物園がウンピョウを飼育・展示しています。
雲の模様を持つウンピョウ。
彼らの姿をぜひ一度見に行ってみてください。