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マウンテンニアラ

マウンテンニアラ
©2019 Rod Waddington : clipped from the original
目次

マウンテンニアラの基本情報

英名:Mountain Nyala
学名:Tragelaphus buxtoni
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ブッシュバック属
生息地:エチオピア
保全状況 EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

マウンテンニアラ
Photo credit: Rod Waddington

エチオピアの絶滅危惧種

遠い未来、アフリカを分断すると言われている大地の裂け目、その名も大地溝帯

年間約1㎝ずつ裂けているこの大地溝帯には、アフリカ最大、世界で2番目に大きいビクトリア湖や、世界で2番目に深いタンガニーカ湖、世界最多の3,000種の魚類が生息するマラウィ湖など、様々な湖が存在し、多様な生物を養っています。

その大地溝帯上にある国、エチオピア。コーヒーで有名なこの国は、高山地帯で特徴づけられ、そこにすむ生物には固有のものが少なくありません。

例えば哺乳類では、霊長類のゲラダヒヒや最も希少なイヌ科動物であるエチオピアオオカミがよく知られています。

そんな中彼らと並ぶ、エチオピアを代表しえる哺乳類が有蹄類のマウンテンニアラです。

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マウンテンニアラは、あの世界三大珍獣の一種、オカピよりも遅れて20世紀初頭に発見された動物で、アフリカでは最後に見つかった大型有蹄類です

オスにのみ生える角とたてがみが特徴的で、標高2,400~3,200mという高山地帯で最もよく見られます。

彼らの分布域はエチオピアの大地溝帯の東部で、特に分布域の南部にあたるバレ山地に高密度に生息しています。

バレ山地には、1970年に設立されたバレ山脈国立公園がありますが、マウンテンニアラはその北部を占めるゲイセイ平原に中でも多く生息しており、よく研究対象となるのはここの個体群です。

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そんなマウンテンニアラは絶滅の危機に瀕しています。

特に分布域の北部では生息地の分断が進んでおり、さらなる減少が懸念されています。

最も大きな脅威は生息地の破壊です。

エチオピアはかつてその65%が森林でおおわれており、特に高地ではその9割が森林でした。

しかし現在国土を覆う森林はたったの約2%、高地では約5%です。

エチオピアはアフリカで2位の人口を誇り、現在1億1,500万人が住んでいます。

その大半は田舎で暮らしており農地の拡大や燃料としての需要により森林が失われているのです。

こうした環境の喪失は、農地に適した低地で顕著であり、そこに住むゾウライオンはエチオピアの景色から次第にいなくなりました。

しかし、高山に適応したマウンテンニアラはかろうじて生きのびています。

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そんな彼らを襲う脅威は他にもあります。低地が農地となると、家畜はより高い場所で育てられることになります。

エチオピアには人口に匹敵する数のウシ、ヒツジ、ヤギが家畜として飼育されており、特にウシは半数以上が標高1,500m以上で飼育されています。

そうなると、家畜とマウンテンニアラの間にエサや生息地をめぐる競合が生まれてしまい、これがマウンテンニアラにとって脅威となっています。

他に密猟も脅威となっています。

マウンテンニアラは国や地方政府によって法的に保護されています。

狩猟できる場所はサファリハンティング目的で一部に限られており、そうした場所でも年間捕獲頭数などの制限が厳格に敷かれています。

例えば、規定に満たないオスを殺したりメスを殺したりすると罰金やライセンス停止などの処分が下されます。

こうした規制をかいくぐった密猟が存在し、トロフィーや肉目的で彼らは殺されています。

また、オロモ族やアルシ族などの人々によっても狩られる場合があります。


高山という逃げ場のない場所に生息するマウンテンニアラ。

国立公園ですら以上のような脅威が存在する中、積極的な保全活動が推進されています。

ちなみに彼らは、上述の世界遺産、バレ山脈国立公園のロゴにもなっており、パンダトラなどのようなフラッグシップ種(象徴種)としての役割が期待されています。

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マウンテンニアラ
Photo credit: Richard Mortel

A profile of the mountain nyala (Tragelaphus buxtoni) | Paul Evangelista, Paul Swartzinski, Robert Waltermire

マウンテンニアラの生態

生息地

マウンテンニアラはエチオピアの固有種で、標高1,800~4,300mの森林や草原に生息します。

形態

体長は1.9~2.6m、肩高はオスが1.2~1.35m、メスが0.9~1.1m、体重はオスが180~320㎏、メスが150~200㎏でオスの方が大きくなります。

オスにのみ生える角は通常1m程度で、生後6ヵ月ごろに外から見えるようになります。

また、オスはタテガミを持ち、これは生後5ヵ月頃から顕著になります。

メスや子供が明るい色をしている一方、オスは暗い体色をしており、年とともにより暗くなっていきます。

喉元の白いパッチや9本までの体側の縞模様が特徴的です。

マウンテンニアラ
Photo credit: Richard Mortel

食性

主にブラウザーで葉などが主食ですが、草も食べます。

特にメスは雨季にはグレイザーとなり草を中心に食べ、乾季にはブラウザーとなるようです。

他のウシ同様、上顎切歯は欠けており、柔軟な舌を使って採餌します。

胃は4つあり、微生物の力で低質な植物をエネルギーに変えています。

捕食者はヒョウブチハイエナが知られています。

また、特に子供はセグロジャッカルイボイノシシに襲われることがあります。

ごくまれにライオンにも捕食されるようです。

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行動

薄明薄暮時に活発になります。最高時速は45㎞/hで、1.7mのフェンスをジャンプで越えることができます。

なわばり性はありませんが、オスは特に繁殖期になると角を木や泥にこすりつける行動がよく見られるようになります。

マウンテンニアラ
Photo credit: Richard Mortel

社会

メスが2~11頭の母子の群れを作る一方、若いオスは2~3頭の若いオスの群れを、成熟オスは単独で生活する傾向にあります。

基本的に群れ同士は寛容で、休憩や採餌の場所では100頭近くの集団で見られることがあります。

オスは1歳ごろになると生まれた群れを離れて若いオスの群れに合流します。

彼らが実際に繁殖できるようになるのは、5~6歳頃です。

繁殖

年中繁殖は見られますが、地域ごとにピークがあるようで、例えばバレ山脈国立公園では12月~1月に交尾のピークが見られます。

メスの妊娠期間は8~9ヵ月で、1度の出産で通常1頭の赤ちゃんが生まれます。

赤ちゃんは生後数週間は茂みに隠されて育ち(ハイダー型)、その後母親の群れに合流します。

生後半年で離乳し、2~3歳で性成熟に達します。

寿命は15~20年です。

人間とマウンテンニアラ

絶滅リスク・保全

マウンテンニアラの個体数は、1960年代には少なくて7,000頭と推定されていましたが、現在は約4,000頭とされており、いまだに減少傾向にあると推測されています。

今後もこの傾向は続くと目されており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。

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動物園

日本ではマウンテンニアラを見ることはできません。

マウンテンニアラ
Photo credit: Richard Mortel
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