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アライグマ

アライグマ
©2020 Konstantin : clipped from the original
目次

アライグマの基本情報

英名:Northern Raccoon
学名:Procyon lotor
分類:食肉目 アライグマ科 アライグマ属
生息地:ベリーズ、カナダ、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、アメリカ合衆国、オーストリア、アゼルバイジャン、ベルギー、チェコ、エストニア、フランス、ジョージア、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スイス、ウクライナ、ウズベキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉

アライグマ
Photo credit: Will Pollard

参考文献

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特定外来生物

水の中に住むエサを探す様子が手を洗っているように見えることから、日本ではその名がつけられたアライグマ。

これは世界の人々が共有するイメージのようで、その種小名であるlotorはラテン語で洗うことを意味しますし、ドイツ語でもその名は“洗うクマ”を意味するようです。


そんなアライグマは北米原産ですが、現在ヨーロッパや日本の野生にも生息しおり、その勢力を目下拡大中です。

日本では2018年時点で、秋田県、高知県、沖縄県以外の都道府県にアライグマが生息しており、外来生物として猛威を振るっています。

日本に定着している外来種はすべての生物を含めると数千ともいわれますが、その中で生態系や人間社会への影響が大きいものを侵略的外来種と言います。

アライグマは日本生態学会が定める「侵略的外来種ワースト100」に選定されています。


日本で最初に野生化したアライグマの存在が報告されたのは1962年で、彼らは愛知県犬山市の動物飼養施設から脱走したものだとされています。

その後1977年に『あらいぐまラスカル』が放映されると、ペット人気に火が付き、一時は数十万頭ものアライグマが北米から輸入されました。

しかし、アライグマは特に繁殖時期になると攻撃的になり人の手に余るようになります。

そうして野外に放されたアライグマが野生化し、特に農産物への被害という形でその影響が表れ始めます。


そんな中2005年、「特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与すること」を目的として、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、いわゆる外来生物法が施行され、アライグマはこの特定外来生物に指定されます

特定外来生物は輸入だけでなく、その飼育や野外への放逐などが規制されており、これに違反すると個人では3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人では5,000万もしくは1億円以下の罰金を科されます。


このように法律による規制がされるようになりましたが、アライグマは依然として特に農産物に多大な被害を及ぼしています。

農作物への被害額は2022年で4億6500万。

この額は哺乳類ではシカ、イノシシ、サルに次ぐ4位で、生物による被害額全体の3.6%を占めています。

2000年の被害額が3,600万円であったことと比べると、アライグマの存在感はむしろ増していることがわかります。

特に被害がひどい農産物は果実と野菜で、2022年には4億円以上もの被害をもたらしています。


日本ではアライグマの存在による被害は、農作物への被害という形で最も現れていますが、外来種として他にも影響が懸念される問題があります。

たとえば在来種への影響はアライグマにかかわらず外来種問題の筆頭に挙げられます。

エゾサンショウウオやトウキョウサンショウウオ、ダルマガエル、ニホンザリガニ、シマフクロウ、ヤマネ、ムササビなどの生物は、アライグマのエサとなる可能性があります。

また、アライグマのエサや生息環境などは見た目がそっくりなタヌキやアカギツネと競合する可能性があります。

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この他、アライグマは狂犬病やアライグマ回虫による幼虫移行症、ジステンパー、日本脳炎などの人獣共通感染症を媒介するため、人の健康を害する恐れがあります。

また、外来のウイルスや菌を持っている可能性もあり、人間社会だけでなく生態系を攪乱する可能性もあります。


日本におけるアライグマの捕獲数はここ数年、約4万頭で推移していますが、アライグマの勢力を削ぐほどではありません。

夜行性で木登りが得意な彼らを日本から締め出すのは難しいでしょう。

アライグマ
Photo credit: Anthony

環境省 | 分布を拡大する外来哺乳類 アライグマ ハクビシン ヌートリア

環境省 自然環境局 野生生物課 外来生物対策室 | アライグマ防除の手引き(計画的な防除の進め方)

アライグマの生態

生息地

アライグマは北米および中米を原産地としています。

水資源がある場所であれば人の居住地でも生きていけます。

特にマングローブや浸水林、沼沢林などに好んで生息します。

形態

体長は45~70㎝、肩高は25~30㎝、体重は5~10㎏、尾長は20~30㎝で、オスの方がメスよりも1~3割重たくなります。

特に寒い地域に生息する個体は、体重の半分を脂肪が占めることもあり、エサの少ない冬を乗り切るためにこの脂肪を使います。

後ろ足は左右に180度回転させることができるので、頭を先にして木から降りることができます。

アライグマは蹠行性でかかとまでしっかりつけて歩きます。

食性

アライグマは食肉目に属しますが、雑食性です。

液果類や堅果類、昆虫類、爬虫類、両生類、小型哺乳類、魚類、人の食べ残しなどなどその食性は多様です。

捕食者にはオオカミボブキャットピューマコヨーテ、猛禽類、ワニなどが知られています。

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行動・社会

アライグマは夜行性で、日中は木の洞や根元に作られた巣で休息します。

冬眠はせず、冬でも体温は一定です。


アライグマは子連れの母親を除くと単独性ですが、血縁関係のあるメス同士は集まることがあります。

最大で5,000haの範囲を移動し、特に繁殖期のオスは広範囲を行動します。

アライグマ
Photo credit: Channel City Camera Club

繁殖

北半球では春に出産します。メスの妊娠期間は約2ヵ月で、体長10㎝、体重60~75gの赤ちゃんを3~7匹巣に産みます。

赤ちゃんは生後3週で目を開き、4ヵ月で離乳します。

最初の冬は母親と過ごしますが、次の春に独立します。

性成熟は1~2歳で達し、寿命は野生で通常5年、最大約16年、飼育下では20年以上生きる個体もいるようです。

アライグマ
Photo credit: Jason Crotty

人間とアライグマ

絶滅リスク・保全

アライグマはもともとの生息地以外にも勢力を拡大させており、個体数は目下増加中です。

絶滅は懸念されておらず、むしろ他の生き物を危険にさらしている可能性があります。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

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動物園

アライグマは北海道から鹿児島県まで、各地の動物園で見ることができます。

野生でも遭遇する可能性がありますが、その場合は近づかず自治体にご連絡ください。

アライグマは鳥獣保護法の対象でもあるので、勝手な捕獲は禁止されていますのでご注意ください。

アライグマ
Photo credit: California Department of Fish and Wildlife
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