オグロジャックウサギの基本情報
英名:Black-tailed Jackrabbit
学名:Lepus californicus
分類:兎形目 ウサギ科 ノウサギ属
生息地:メキシコ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
長い脚、大きな耳
ウサギと言えば発達した後ろ足でぴょんぴょん跳ねる姿と、大きくて長い耳のイメージがありますが、オグロジャックウサギはまさにそのイメージに当てはまるような姿をしています。
こうしたウサギのイメージはいわゆるノウサギに近いですが、オグロジャックウサギの英名は、Black-tailed Jackrabbit。
英語でRabbitと言えば、アナウサギのことを指します。
しかし、オグロジャックウサギはアナウサギではなくHare、つまりノウサギのなかまです。
アナウサギが穴を掘って捕食者から身を隠したり生活したりする一方、ノウサギは穴を掘ることはありません。
彼らは地上で生活し、その足で捕食者から逃げ切ります。
オグロジャックウサギは、その長い脚で時速60㎞近くで走ることができる、ノウサギの典型です。
ウサギ類の歩行は独特で、通常時の歩行は足の裏をべったりと地面につける蹠行性ですが、走るときはつま先で走る趾行性を見せます。
長い脚がつま先歩きになることでさらに長い歩幅となり、早く走ることができるというわけです。
ちなみに蹠行性の代表例はヒトやクマ、趾行性の代表例はネコやイヌです。
オグロジャックウサギは暑さが苦手です。
明け方や夕方、夜に活動することが多く、日中は木陰で休息します。
そんな彼らにとって欠かせないのが大きな耳。
10㎝以上にもなる大きな耳は、周囲の音を集めるという機能だけでなく、体温調節機能も持っています。
耳には血管が張り巡らされており、暑いときにはその血管が拡張することで熱を逃がしているのです。
このように大きな耳で熱を逃がす動物にはほかに、サバンナに住むゾウや砂漠で生活するフェネックギツネなどがいます。
長い後ろ足と大きな耳。
この二つの特徴は、体が大人の大きさになるよりも早く、大人の大きさになることが知られています。
足と耳がオグロジャックウサギにとってどれだけ欠かせない特徴であるかがわかります。
オグロジャックウサギの生態
生息地
オグロジャックウサギはアメリカからメキシコにかけて広く生息します。
アメリカではフロリダ州やマサチューセッツ州に導入され、定着しています。
標高3,800mまでの乾燥した地域に分布し、森林やプレーリー、低木林、砂漠などで生活します。
農場付近にも高い密度で生息しています。
形態
体長は47~63㎝、体重は1.3~3.1㎏、尾長は5~11㎝、耳長は10~13㎝で、メスの方がオスよりも大きくなります。
名前の通り、黒い尻尾が特徴的です。
食性
オグロジャックウサギは草食で、草や葉、サボテンなどを食べ、水分はほとんど食料から摂取します。
夏には草本類や広葉草本の葉、餌の少ない冬には低木の枝などを食べます。
捕食者にはピューマやボブキャット、コヨーテ、アナグマ、キツネ、猛禽類、ヘビ類などが知られています。
行動・社会
夜行性ないし薄明薄暮性のオグロジャックウサギは、社会性は希薄で単独性です。
1㎢ほどの範囲で生活します。アナウサギのように穴を掘って生活することはありませんが、数㎝程度のくぼみを作り、休息したり、出産したりします。
繁殖
繁殖には地域ごとに季節性があります。
メスは交尾の刺激で排卵し(交尾排卵)、41~47日の妊娠期間ののち、1~6匹の赤ちゃんを産みます。
メスは年に3~4回出産することができます。
赤ちゃんは毛でおおわれ、目が明いた状態で生まれます。
生後8週までには離乳し、生後7ヵ月で性成熟に達します。
寿命は飼育下で5~7年です。
人間とオグロジャックウサギ
絶滅リスク・保全
ウサギ類の個体数は変動することが知られており、現在は減少トレンドにあるとされています。
ただ、オグロジャックウサギは生息範囲も広く、人間による狩猟などの影響もほとんどないとされており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
オグロジャックウサギは日本では見ることができません。